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コンパスの周囲の磁性体あるいは電気装置が発生する磁界の影響を避ける必要がある。これに関して船舶設備規程第257条に「磁気コンパスに近接する電路、電気機械及び電気器具は(これに有害な磁気作用を及ぼさないように配置しなければならない」と規定している。さらに航海用レーダーの性能基準を規定している第146条の13の1に「磁気コンパスに対する最小安全距離を表示したものであること」と定め、磁気コンパスに対する影響を排除するように配慮してある。

IMOでは、すべての大洋航行船舶に一定の性能をもつ磁気コンパスの装備を義務化している。さらに、その性能を維持するための装備条件が検討され、磁気コンパスは、船体構造物及び電気装置の影響の少ない位置に装備することが要求されている。

(2)磁気コンパスの安全距離の定義と測定法

磁気コンパスの安全距離とは、ISO勧告R694の定義によれば「磁気装置あるいは電気装置が磁気コンパスに与える影響を除去するか、あるいは大幅に減少させるために必要な最小距離で、磁気コンパスボウルの中心から各装置の最接近点までの距離」をいう。

ISOの磁気コンパス安全距離の測定法には、通常の地球磁場内で測定するA方法(Method A)と、減磁場の中で測定するB方法(Method B)とがあり、いずれかの方法で測定した値を磁気コンパスの安全距離と定義する。

(3)航海用レーダーと磁気コンパスの安全距離の検査

第一固定期検査の検査項目には「磁気コンパスに対し、その航海用レーダーに示されている安全距離が保たれていること。ただし、当該安全距離が保たれていない場合であっても、航海用レーダーを設置したことによって磁気コンパスに与える誤差が、当該レーダーに電源を入れた状態と電源を切った状態にかヽわらず軽微(自動衝突予防援助装置及び自動操舵装置に電源を入れた状態と電源を切った状態とのいずれの状態においても、これらの装置及び航海用レーダーによる誤差が、あわせて0.5度以内を標準とする。)なものであれば、安全距離を保っていることとして差し支えない。」とあって、磁気コンパスに対する安全距離を検査することになっている。

このため、磁気コンパスの自差修正は、レーダーの装備が完了してから実施する必要がある。

 

 

 

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