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送信信号の長さは100μsでありこの信号のすべてが受信されたとすればレーダーのPPIの指示面のSARTの位置から遠方に150m×100(μs)=15km(約8海里)の尾を引くことになる。しかし、実際はこの100μsの間に12回幅300MHzをのこぎり歯状に変化させているため、尾のうちの受信可能な部分のみが映像として現れ、12点の破線の尾となる(のこぎり歯状の電圧の急速立上り部に一部短時間の受信信号があるので、よく見るとこの尾は破線でなく一点鎖線である)。このような連続の短点が捜索救助用のトランスポンダーの識別符号として規定されている。レーダーがSARTに近付くとその空中線の向きに関係なくSARTは応答をするので、映像は同心円となり、遭難者に近付いたことが分かり、またSARTの受信音も連続になる。

レーダー・トランスポンダーの電源は一次電池で、当面、二酸化マンガン・リチューム電池が使用されている。

前項の非常用位置指示無線標識装置はそれ単独では装置へのホーミング機能はない。したがって、このためGMDSSでホーミング装置であるレーダー・トランスポンダーを遭難船と生存艇に併せて積付けることがワンセットとなり、この方も非条約船にも装備されるように決定されている。船舶救命設備規則の第40条(及び関連の船舶検査心得)にその性能要件の規定があり、電波法関係では、このトランスポンダーは「捜索救助用レーダー・トランスポンダー」と呼ばれ、無線設備規則の第45条の3の2に性能規定と別に指定周波数帯の告示がある。

 

2・7・1 レーダー・トランスポンダー(SART)の概要

 

船舶又は航空機に装備されている9ギガヘルツ帯のレーダー電波に応答して同じ9ギガヘルツ帯の電波をレーダー・トランスポンダーから発信し、それを船舶又は航空機のレーダー映像面に発信位置を一列の輝点で表示させるホーミング装置である。船舶からのレーダー・トランスポンダーの探知距離はSARTの海面上の高さ及びレーダーの空中線の高さにより変り、数海里であるが、航空機ではさらに遠くから遭難者を発見できる。

このレーダー・トランスポンダーは、船舶安全法上の名称で、電波法では捜索救助用レーダー・トランスポングと呼ばれている。IMO決議A.604(15)「捜索救助活動に使用する生存艇用レーダー・トランスポンダーの性能標準」の概要を次に示す。

 

 

 

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