4.3 亀裂を持つ材料の強度
1)破壊力学
無限遠方で一様な引張り応力を受ける無限平板において,精円孔先端の曲率半径を小さくして行くと式はつから分かるように,最大応力は次第に大きくなって行き,曲率半径がゼロの極限では,遂には無限大になる。精円孔の先端の曲率半径がゼロということは,亀裂を意味する。実際には機器の定期点検時などに亀裂が発見されることがしばしば報告されるように,亀裂が存在していても機器は壊れることなく作動していたわけである。すなわち,このような場合,無限大の応力が存在しているにもかかわらず材料は破壊することなく負荷荷重を支えているのである。このことから,このように亀裂を持つ材料に対しては,応力を強度の基準にする事はできない。無限大の量に大小は考えられないからである。
さて,補・53図に示す長さ2a亀裂先端近傍の応力分布びyは次式で与えられる。