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るエネルギーの消費量を極力抑えて効率のよい、同時にまた地球環境にしい経営を維持することはできなくなります。せっかく製造業が世界に冠たる低燃費の自動車を、あるいは世界に冠たる高能率の輸送機械を提供しとしても、その使い方において、その利用方法において著しく国際的基準に劣るやり方を続けているとすれば、それは極めて不利な状況に自らを追い込むことになります。

さて、このような中で日本はこれから21世紀に向け、どういう役割を果たさなければならないでしょうか。それは既に申し上げたことからも明らかでしょう。

地球環境の保全のために、世界各国が共通して努力するということは、環境保全のために新しいマーケットができるということであります。そのマーケットで優位を占めようと考えるならば、他国に比較して著しく品質、性能のすぐれた、特に環境保全性能のすぐれた機械類を日本の製造業が積極的に生産し、供給していくことが必要であります。特に輸送業をとりましても、日本製の車を買えば自然に燃費が下がっていくというパターン、これはかつて石油ショックの後、家電製品にも見られました。例えば石油ショック以後、冷蔵庫の電力消費量は単位容積当たりにして10年間で4分の1に下がりました。もちろん、車の場合にもそういう傾向はありますが、もっとこれを促進するという需要あるいは刺激が、恐らく21世紀にかけて世界全体、人類共通の課題としての環境保全というテーマにこたえるために、必然的に生まれてくるものと私は予測いたします。

そのために必要なものは、徹底した技術の研究開発であります。また、技術の研究開発を通じ、たとえ名目的に、あるいは外見的に衰退産業と目されている分野においても、研究開発の投資を続けることによって、また強めることによって新しい生き抜く道、新しい成長のルート、成長の手がかりをつかむことができるといって間違いありません。20世紀は、そういう教訓を21世紀の経済のために作ったといってもよいかもしれません。

少なくとも21世紀のかなり早い段階、すなわち21世紀の20年代か30年代、このころまでの時間は、恐らくこうしたパターンが続行できる時代であるといえるでしょう。日本の製造業に技術革新をさらに強めてもらうことによって、地球環境の保全に大きなプラスが人類全体に提供される、これが恐らく日本の世界人類に対して提供しなければならない貢献の骨子である、中心であると、私はこのように考えているのであります。

ご清聴、ありがとうございました。(拍手)

 

 

 

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