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もっとすごい例で言いますと、これはEUのCOSTプロジェクトのホームページにあるものです。そこに出ていたこの写真はある意味で非常に刺激的です。なぜ刺激的かというと、こういう80代、もしかすると90代に達するかもしれないお年寄りがお一人で外出できる手段をこのバスは提供しているということです。日本で90歳ぐらいのお年寄りというと、元気な方もいらっしゃいますが、寝たきりの方が多いのではないかと思います。寝たきりで、フルの介護をすると月に50万ぐらいかかるということです。介護保険の議論もございますが、福祉にかかっているコストをうまく転換できると、バスの値段のアップ分はかなり吸収できるのではないかという気がいたします。

こういうお年寄りをまちに出して本当に大丈夫なのかと心配する向きもあるかもしれません。たまたまこの週末に『ナショナル・ジオグラフィック』を読んでおりましたら、老化の話が出ておりました。老人ホームの入居者が10週間筋力トレーニングしたら筋力が倍増し、歩く速さや階段を昇る能力が向上した。体をあまり動かさない50歳から70歳の女性40人の場合も、週2回の運動を1年間続けただけで筋肉の量がかなり増え、筋力や平衡能力、骨密度が向上した。そういう記述がございました。

別のところでは、アメリカでは転倒事故で骨折した老人の医療費が94年には200億ドルに達したそうです。200億円ではなくて200億ドルです。そういう方面の医療費を高齢者を元気にするということで低減できるのではないか。交通系に頑張っていただければ、そういう方面へかなり貢献できるのではないかと考えられます。

もちろんノンステップバスを入れていれば済むという話でございません。広く福祉のまちづくりという位置づけで、いろいろなインフラを含めて整備していかなければいけないと思いますが、その中の一つのツールとしてノンステップバスが位置づけられるのではないかと思います。

 

4. ノンステップバスをどう普及させたらいいのか

そういう観点から、ノンステップバスをどう普及させたらいいのかということを考えてみますと、先ほどから2015年には4人に1人は高齢者と言われておりますが、皆さんあまり実感を持っていないということをいろいろなところで感じます。ですから5年後、10年後をどう考えるかという話をしても、なかなか議論にならないのですが、バスというのものは少なくとも10

 

 

 

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