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二酸化炭素排出量の削減方策

 

では、CO2の排出量を減らすにはどうすればよいか。おおざっぱに考えますと、CO2の排出量はCO2の排出原単位×トータルの輸送量です。ですから、排出量を減らすには原単位を減らすのか、あるいは総輸送量を減らすのかが問題になります。先ほどのお話は、原単位のほうを減らそうということでした。

もう一方の、総輸送量の削減あるいは距離の削減は、なかなか難しいのです。低公害車の開発よりも難しいかもしれません。交通が、輸送量として経済と結びついており、経済の状況はこのままで輸送量だけを減らすことはなかなか難しいのです。

この式は簡単に書いておりますが、一つの式で表されるわけでなく、輸送機関ごとに排出原単位は異なります。したがって、同じ輸送量であっても、排出原単位のより小さい輸送機関に転換すれば、それだけで減らすことも可能です。この考え方にもとづいたのが、物流におけるモーダル・シフトであるとか、旅客交通における公共交通利用の促進です。

物流のモーダル・シフトは、トラックによる輸送を鉄道や内航海運に転換しようというものです。もちろん、すべてが転換できるわけではありません。しかし、このグラフのように、鉄道のトンキロ当たりのCO2排出量を100としますと、営業用トラックはその6.5倍、自家用トラックだと20倍を超えます。したがって、モーダルシフトを行なうことによって、CO2の削減が大幅に可能になることがおわかりいただけるかと思います。

旅客交通について、1人を1km運んだ場合のCO2の排出量を炭素換算した重さで比較しています。自家用乗用車とくらべて、鉄道は9分の1、バスも半分以下になっております。自家用乗用車の利用から鉄道やバスなどの公共交通機関に転換することによって、CO2をかなり削減できることがおわかりいただけると思います。

公共交通の利用を促進すればよいのですが、実際はそうはなっておりません。京阪神都市圏の「パーソン・トリップ」で、1970年から1990年にかけての20年間の交通手段の推移を示したものですが、この20年間で自動車と二輪車の利用が大きく伸びております。鉄道はほとんど現状維持で、バスは減っています。いちばん減ったのは、徒歩です。いかにみんなが歩かなくなったか、二輪車なり自動車利用に乗り換えたかがわかります。

 

 

 

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