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昨年の4月に、運輸大臣の諮問機関である運輸政策審議会で対応策が取りまとめられております。きょうは自動車工業会の関係の方からお話があると聞いておりますけれども、低燃費車の技術開発――発生源をどうやって減らしてゆくかが最大の課題でございます。トップランナー方式、あるいは税制の優遇措置などいろいろありますけれども、これを関係者が力をあわせて支援してゆくことが必要であろうかと思います。いま一つは、その上に成り立つソフトウェアと申しましょうか、パーク・アンド・ライド、トランジット・モール、共同輸送、あるいは最近よくいわれますTDM――交通需要のマネジメントなどの開発がございます。言うは易くして、実行が難しい問題でございますけれども、これをどのように進めてゆくかでございます。

戦後のわが国の歴史を振り返ってみましても、昭和40年代後半に第一次オイルショックがありました。加えて、マスキー法をはじめとするさまざまな環境問題もあり、わが国の自動車産業界をはじめとする分野では、エンジンの開発をはじめとするいろいろな技術革新によってこれを乗り切ってきました。われわれ国民、県民、市民も、これにあわせて省エネルギーの意識に目覚め、これを推進してきました。

もちろん、いま直面している問題とかつてのオイルショックの問題とは違った側面も多くございますけれども、問題はやはり一人ひとりがどう取り組むかということだと思います。こまかく言えば、駐車時のアイドリング・ストップなり、高速道路における適性運行、あるいはエコ・ドライブといわれるようなものを、われわれ一人ひとりが自分の問題としてこれを実践してゆかなければ、運輸部門のエネルギー削減は、なかなか実効の難しい問題であろうかと思っております。そういう意味で、きょうのこの会議が、一人ひとりが考えてゆく一つのきっかけになればと思っているところでございます。

また、観光面につきましては、さきほど西口知事のお話にもありましたように、和歌山県は自然に恵まれた地域でございます。エコ・ツーリズムとよくいわれますけれども、最近の風潮として、そういった自然環境と親しむ観光も、一つのブームになりつつあります。和歌山県では「熊野古道ウォーク」といったものが提唱されて、そういった運動も進めておられます。また、平成11年に開かれます「南紀熊野体験博」は、人と自然の共生が基本理念の一つであるというように聞いております。

こういった和歌山県で、地域交通あるいは観光といった問題について、そのあり方を改めて見直そうというのがこのシンポジウムの最大のテーマであります。地球環境問題を見据えた交通・観光の将来図を考えるという気運を醸成してゆくうえで、まことにふさわしい時宜を得た企画であろうと思います。

本日のシンポジウムが、国だけではなくて地方公共団体、あるいはご参加の県民・市民のみなさま方が共に手を携えて、協力して環境問題を発展させてゆく一つの機会になりますように、またこのシンポジウムが成功しますことを祈念いたしまして、私のあいさつとさせていただきます。

 

 

 

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