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? 交通手段としては大型機の発着可能な空港は一部に限られ、鉄道もシルクロード列車の運行が行われたり、カシュガルまでの延伸工事が精力的に進められているものの、定期列車等は観光の便宜に供せられる余地が現時点では殆どない。その結果、新疆ウイグル自治区における主要観光地点へのアクセスは道路輸送が中心となっているが、西域南路沿いの古の一部地域を除いては旅行が可能な状況にあり、通信手段も確保されている。エアコン付き(時にはトイレ付き)の最新鋭の日本のバス車両も投入されており、旅行が快適なものになるような努力がなされている。

? いずれの訪問先においても日本語ガイドが存在しており、日本人旅行者が通常のコミュニケーションにおいて不自由しない状況にある。

また、今後改善されるべき事項として以下のような事項があげられる。

 

? 歴史文化資源は、現在の居住者であるウイグル族などが回教徒であることもあってか、仏教遺跡を中心とする古代の歴史文化に対する関心が薄いこともあり、現存観光資源として供されているものは西に行くに従って少なくなる傾向がある。新疆ウイグル地区がシルクロードの文物の十字路であったという歴史に鑑みれば、現在埋もれている歴史文化資源の開発と再評価が行われれば歴史文化資源はより一層豊富で多彩なものになるものと思われる。

? 博物館は歴史文化資源や自然資源の管理、保存のみならず、シルクロードを旅行する者に対する歴史文化資源や自然資源に対するオリエンテーション機能を果たすものとして重要であるが、現時点における展示、案内システムは十分なものとは言い難い水準にある。また、ブローシャー、絵葉書、スライド、ミニチュア、レプリカなどの記念品は魅力あるものとは言えない。シルクロードを旅行する者に対する観光魅力の増大と歴史文化資源や自然資源に対する意義を旅行者に深く理解させるための改善が望まれる。このような改善の努力は地域住民に対して自らの歴史文化や自然環境に対する理解を促進し自らの有する資源に対する誇りを喚起することとなるものと思われる。具体的には、照明、導線などを含む展示方法の改善を図るとともに、少なくとも英語の案内表示の付記が望まれる。加えて、ブローシャーも内容の充実強化とともに英文のものの整備が不可欠であり、魅力あるスライドや展示品のレプリカの作成は魅力ある土産物の開発にも資するものと思われる。

? 伝統芸能は現在新疆ウイグル自治区において観光の用に供されているものはウイグル族の踊りに限定されており、今後多くの少数民族の民族芸能を観光の用に供する事により多彩なものとなることが期待される。

? 土産品は一部新疆ウイグル自治区独特なものが散見されるが、殆どは全国一律の同工異曲のものが販売されており、購買意欲をそそられるものが少ない。少数民族の伝統工芸品などを土産物として提供する努力することにより多彩で魅力あるものとすることが望まれる。

? 肉は羊肉が中心であるが野菜や果物が豊富で食事の内容は多彩である。新疆ウイグル自治区に特有の多種多様な麺、ナン、ヨーグルトなどを活用し、味付け、分量などについての一層の工夫がなされればより魅力あるものと思われる。

? 宿泊施設は一応の水準に達してはいるものは量的に限られており、サービス水準も必ずしも十分とは言い難く、今後旅行者の増大を望むのであれば、より一層の改善が望まれる。国際水準のホテルの建設の促進とともに、宿泊手続き、案内、両替、通信などともすれば

 

 

 

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