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れは私は他文化がいかに共存してきたかということを実践してらっしゃる東南アジアの国々に私自身は注目しています。文化に寛容たれ。文化とは何か。こういうことを我々は欧米を中心に見てきたわけですが、そうではないものをこれからは見ないと、日本の未来というものがうまく描けない。イギリスをやっている私の率直な感想がこれです。

イギリスを見ていて、今日お話ししましたように、100年前にやったこと、100年前に自分たちの先祖がやったことを今のイギリス人が感謝している。先ほど崔先生が、長いタイムスパンでというふうにおっしゃったことは、イギリスはこの点はある意味で当たっていると思います。非常に気の長い国です。過去を見ることが好きな国です。それが今幸いしている。つまり今我々が唱えなきゃいけないことは、観光とか文化とかといった問題を、単にそのものだけじゃなく、人をどう集めるかというそこだけじゃなく、これからどういう時代になっていくのかという時代像が描けるかということです。そのうえで、だからこそここが評価される、ここが見てもらえるということになる。そういう大きな意味での日本の転換、即ちこれからどういう時代になるのかということが、今、見えない時代ですけれども、そこを見なければいけないということを私自身、今日のシンポジウムの中で、あるいは日頃の自分の研究の中でも痛感しております。

 

高 田: 最後に広野さん。

 

広 野: はい。

先ほどルピデュフの野外劇の話をしました。これは日本においてすべて言えるんですけれども、戦後本当にすべてが画一的なものになってしまった。すべての大切なものをたくさん失ってしまった。そういう中でどうしたらいいかというときには、野外劇の手法というのは大切だろう。いわゆる再発見、再認識するためには大変大切だろう。

しかし我々のニーズはどんどん変わっていっていると思うんですね。例えは私が一番感動した風景、これはアジア、インドネシアなんですけれども、バリ島で水田の中を水牛に乗った少年が夕日を背景にこちらに歩み寄ってくるわけです。その横をアヒルがガーガー言いながらついていくわけです。私はその風景を見て涙したわけです。

それはなんでそうなのかというと、我々の今の社会の中にやはりないものを求めていって、それをそこで得たということなんですね。そうすると単に我々はひとつの画一的な旅行社がつくるような、リゾートというような言葉で言われている、きれいなホテルがあって、美しい海があるだけの観光開発ではなくて、意外とその土地の入も気づかない、大変すばらしいものが残されている。そういうところにも着目して、例えばこういう大阪というようなざわざわした都市で住んでいる人たち、サラリーマンたちが、本当に心安らぐのは今私が申し上げたような水田と水牛と少年と夕日とアヒルかもわからないですね。そういうようないろんな二ーズに対応した旅行プランというか、そういうものもきちっと開発していく方向性があるんではないかなという気がします。

 

高 田: 恐らくそういう魅力ある地域をつくっていく資産が、タンスの中に眠っている。私はタンス預金を資本化しようというふうに申し上げたわけでありますけれども、タンスの中に眠っている価値あるものを見つけ出す。ホストとゲストがそれをお互いにやり取りする。実はやり取りというのは工業社会では工業製品とお金をやり取りしていたわけでありますけれども、これからの時代はお互いの持っているいいものをやり取りしながら、それが経済にもつながっていくという方向を考える必要があるんだろうと思います。

ただ、そういう価値あるものは足の下にあると申しましたけれども、毎日見ていたらなかなか見つからない。今のバリ島の風景も恐らくは広野さんが大阪という大都会に生まれ育ったから見つかったすばらしい風景だったんではないか。そいうすばらしさを見つけるのは、その土地の人々の知恵であるわけですけれども、同時にそこにまた旅人、ビジター、ゲストの知恵が生きてくる局面があるのではなかろうか。できるだけ気持ちを自由に解き放って、何に値打ちがあるかわからんという目で改めて身の回りを見てみると、それが他の地域の人々にとっては心打つ、価値ある文化資産である、ということになるのではなかろうかと思います。

ちょうどただいま予定の6時15分には30秒ぐらい前でありますけれども、まだまだ皆さん方にお話しいただきたいことはたくさんありますが、時間厳守ということで、このシンポジウムをお開きにさせていただきたいと思います。

皆さん、どうもありがとうございました。(拍手)

 

 

 

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