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◇川西町消防本部◇(山形)

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川西町は山形県の南部、米沢盆地のほぼ中央に位置し、周囲を吾妻・飯豊・蔵王等美しい山々に囲まれた丘陵地帯にある。町名の由来は最上川の西に位置することから命名された。当町出身の直木賞作家「井上ひさし氏」は米沢盆地は『地球の中心である』と名言を述べた。氏の数多い作品の中には、幼少期を過ごした故郷の厳しい風土、四季の自然景観が描写されていることは、想像に難くない。

また、イギリスの女性旅行家「イザベラ・バード」は『アジアのアルカデァ(理想郷)』と絶賛している。先人は、この自然の恵みを後世に伝える努力を怠らなかった。草木の恩恵に感謝し、供養した「草木塔」はその一例だろう。

自然は豊かな水を生み、町民の生活を潤すほか、良い酒・うまい米を育んできた。かつて、米の反収日本一を記録した当町は正に米どころである。

また、米沢牛のルーツとして長い歴史を持つ玉庭放牧場、日本一と言われるダリヤ園も見どころである。

一方、自然の地形と共存する形でスキー場、ゴルフ場、温泉宿泊施設等の整備が進み、多くの人的交流が盛んである。

★平穏が続く

消防本部は昭和43年に発足し、現在1本部・1署・37人の職員と691人の消防団員が21,000人の防災を担っている。本部発足の前年、羽越水害により町全体に甚大な被害を受けたが、これ以来、大きな災害は記録されていない。

★救急救命センターに期待

置賜地域(3市5町)を範囲とする公立病院と県立救急救命センターが、平成12年の開業を目標に町内に建設が進められている。当消防本部ではこれに合わせ、救急救命士の養成とともに、救急施設の整備を図り、救急業務高度化に向け準備を進めている。

公立病院及び救急救命センターの開設は本町のみならず、置賜地域の基幹病院として、人命救助に対する救命率の向上に大きな期待が寄せられている。

★手作りミニ消防車が大人気

職員のアイデアにより、広報の目玉としてミニ消防車を作った。不要になったゴルフカートをベースにポンプ、サイレン、赤色灯をつけた職員の手作り品。愛称を募集したところ560点の応募があり、「ミニ防くん」が選ばれた。乗って、走って、放水も出来るという本格的なところが人気の秘密である。学校の避難訓練等には「必ず要請がある」というから、この作戦見事に大成功!

★消火栓毎に消防隊

管内には250基の消火栓があり、そのすべてに消火栓ボックス(管槍、ホース、開弁ハンドル等セットで収納)が設置してある。この消火栓を中心に自主組織の消防隊が結成された。構成は隊長以下4〜10人で組織され、現在193隊・1,744人が参加している。隊長研修会のほか、隊員には年2回の訓練を実施することで、初期消火に成果を挙げている。

また、訓練等の事故に対する補償等も確立するなど心配りもみせている。消防団員はポンプ車等の装備をもって活動するため、この隊には含まれていない。

★信頼される消防を目指す

当本部では、「小粒でもピリット!とを念頭に町民の安全を守るべく、日夜訓練に励んでいる。

一昨年に引き続き、今年も全国救助技術大会に出場し、優秀な成績を収めるなど各方面で実績を残している。齋藤消防長は、職員一人ひとりの資質の向上と創意工夫を奨め、「住民に密着した、信頼される消防」を目指している。

全職員は意気軒昂、次なる「ミニ防くん」は如何に?

(海老原光三)

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