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防災まちづくりの推進について

消防庁防災課長 益本圭太郎

 

都市に生活を営む人間にとって安全であるということは、欠くべからざる基本的要件であるが、阪神・淡路大震災を契機に、「安心・安全」に対する関心が高まりを見せており、都市に9割の人が住むといわれている今日にあって、防災まちづくりは国民の大きな関心事となっている。

我が国は、その地理的・自然的条件から、これまでも災害との戦いであった。江戸時代以降、大火や地震などの災害を契機に、各地で防災まちづくりが行われており、江戸の火除地、火除堤、尾張の四間道、飯田市のリンゴ並木・桜並木などにその例を見ることができる(「地域防災データ総覧・防災まちづくり編」(財)消防科学総合センター参照)。また、明治以降、都市計画制度をはじめとするまちづくりに係る関係法令の整備も進んできている。本稿においては、改めて防災まちづくりについて考えてみたい。

1 防災まちづくり

防災の意味は、災害対策基本法にもあるとおり、災害の予防、被害の拡大防止、復旧にある。従って、防災まちづくりとは、災害が発生しにくくすることであり、災害が発生した場合には被害を最小限にとどめることであり、さらに、元の状況に一日でも早く復元できることに留意したまちづくりである。

また、防災まちづくりといっても防災のみに着目したまちづくりではなく、安全を基本として、快適さや利便性といった都市本来が持つ機能を増進させるものでなければ、住民の理解を得ることはできない。このためには、各種の計画・事業が防災の観点を加味し総合的に実施されることが求められる。

さらに、まちづくりは、官民一体的に、ハードとソフトを含めた総合的な取組であり、いわば災害に強い社会づくりともいえる。すなわち、行政においても、災害に強い施設等を整備するだけでなく、施設のネットワーク化など防災体制を整備する必要があるし、住民においても、自らの住宅を耐震化したり、密集木造住宅の解消に資する市街地の再開発への協力や、自主的な防災活動の組織化による地域防災力の強化等を行うことが必要である。

2 災害のイメージ

災害は、火災、地震・風水害等の自然災害、道路災害等の事故災害に分類できるが、地域によって発生する災害の種類、頻度が異なるし、また、災害によって対応が異なることから、防災に当たってどのような災害を想定するのかによって、まちづくりも異なってくる。

事故災害については、発生した場合の対策を事前に検討しておくことはいうまでもないが、まちづくりに際しては、むしろ火災や自然災害を念頭に置いて取り組むこととなろう。近年、消防力の整備等により大火災は発生しておらず、また、治水事業の推進等により大規模な風水害は少なくなってきているが、地震は、災害の発生が予測できず(従って、事前に避難することができない)、一方、一度災害が発生すると地域の生活・経済基盤を瞬時に破壊し、同時多発火災を伴う複合災害となりうるものであることから、地震を想定してまちづくりに取り組むことが一般的であろう。

3 地域の特徴の把握

まちづくりのためには、まず、地域における災害の特徴、すなわち、どのような災害が、どの地域で発生しやすいのかを把握することが必要である。このためには、自然災害の場合、地形等の自然条件や地盤の状態を調査することとなるが、その際、都市化の進展に伴う開発事業

 

 

 

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