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?-2-1-3 今後の検討課題

本年度の試験結果から得られた今後の検討課題については、以下のとおりである。

(1) 実海域を想定した評価手法の確立

本年度は前述の油処理剤・油ゲル化剤の性能を調査し、現有油防除資機材の粘度変化・散布量変化に対する性能を、実験室での試験という条件で、把握することができた。しかし、攪拌力・油処理剤添加方法・閉鎖系で行っている等の制約から、この性能試験結果は、ある条件下におけるラボ試験の性能値であって、実海域で使用する際の一つの目安となり得るであろうが、実海域とラボ試験との相関関係に多くの検討課題がある。次年度以降、以下に示す検討課題について引き続き調査し、実海域を想定した評価手法の確立を図る。

1) 撹拌法

実海域を想定し、撹拌方法及び撹拌時間を再度検討する必要がある。

2) 容器容積

大型の試験装置は複雑であり、試験に長時間を要することと、費用が高くなる欠点があり、かつ再現性に問題がある。実験室実験での再現性の高い試験を検討する必要がある。

3) 海水量

海水量は撹拌時の海水の運動量に影響を与えるため、検討が必要である。安定性の高い性能値を求めるには、ある程度海水量が多い方が望ましい。

4) 油:海水比

Fingas等の試験研究によると油水比が1:200以下では乳化率が下降し、1:20で特に大きく減少する。有効性の最大値は約1:500でみられ、有効性は1:1,000〜1:3,000までは比較的安定している。この変化は油処理剤の作用メカニズムが異なることを示しているものと考えられる。油水比が小さい場合、大量の界面活性剤が存在していることになり、この界面活性剤が相互に作用しあって、油に作用しないでミセル構造をとる。油水比が小さいと多くのミセルができ、これが油の一部を可溶化させる。油水比が高いと、油と界面活性剤の主な相互作用によって分散した油の粒子が形成される。1:500近くではこれら2つのメカニズムが共に働き、はっきりと確認できる分散が増加する。

5) 油処理剤添加方法

添加方法には予め混合と別々添加の2通りがある。実験室実験では別々添加で行った場合再現性が悪い、界面張力で海水面が現れる等といった欠点等があるが、今後実海域を想定し、検討することとする。

 

(2) 自己攪拌型油処理剤の評価手法の確立

本年度の試験結果より、外国製油処理剤(自己攪拌型)等の乳化性能結果がミセルの影響により正しく評価できなかった。これは、現行の試験法が通常型油処理剤を前提としているため、攪拌方法、対油散布量、油:水比等が適切でないためと考

 

 

 

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