?-1-2 ムース化油に対する吸油性能の調査
海上に流出した油は時間の経過とともに海水を取り込みムース化し、その物性を刻々と変化させ、油防除作業に支障を来す。平成9年1月に発生したロシア船籍タンカーナホトカ号事故では、事故発生当初油吸着材による油回収を実施したが、その後ムース化が進み効果が薄れてきたため使用中止となっている。
このため、本委員会ではムース化油に対する現有油吸着材の吸油性能試験を実施し、その評価を行った。
(1) 供試油吸着材
供試油吸着材として、ポリプロピレン製の供試体1を選定した。
供試体の厚み、重量及び繊維の状況等は表1-1及写真1-1に示すとおり。
(2) 供試油
供試油は?-1-1現有油吸着材の高粘度油に対する吸油性能の調査で用いたC重油(JIS k2205 3種1号)に人工海水を加え、含水率60%のムース化油を人工的に作成した。供試油の絶対粘度は回転粘度計により求めた。
計測結果:30,000Cp(20℃)
(3) 吸油性能試験方法
試験は実験室内(室温25℃)で行い、静置時間は120分とした。試験状況を写真1-14aに示す。
(4) 試験結果
ムース化油の吸油状況は、写真1-14bに示すように肉眼でかすかに認められる程度であり、このようなムース油に対しては全く効果がないことが確認された。