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は減ります。ですからこれをモニターして治療していくことが望まれるわけです。ウイルス量は感染後いったん非常に増えます。とくに初期感染症状があるときに血中のウイルス量は増えるのです。しかし,やがて血液中に抗体ができてくると,血中HIV-RNA量は減ってある程度定常状態に達する。これは初感染後の6カ月から9カ月後です。このときのウイルス量が低ければ低いほど発病するリスクが低いのです。低い状態が長く続いているほど長期無発症であるといわれています。どの程度が多いのか,どの程度が少ないのかといいますと,理想的には500copies/ml以下(測定感度以下)ですが,5,000copies/ml以下は比較的少ないほうです。1万以上ではややふえてきた段階と見なして,とくに100万以上ではかなり発症するリスクが高く,ウイルス量がかなり多いと見なされます。治療の目標としてはウイルス量を5,000以下,できれば検出感度以下(500以下)に保つことです。

AIDSの予後として関係するのは,HIVウイルス量だけではなくて,CD4リンパ球数も当然関係してくるわけです。ウイルスの治療薬が効くと,このウイルス量が減るとともにCD4リンパ球が増えてきます。ですから,その二つを指標として治療のモニターをしていくわけです。ウイルスに対する治療薬としては, ヌクレオシドアナログ系の逆転写酵素阻害剤として現在使われているものが5種類あります。AZT,ddI,ddC,3TC,d4T,いずれも日本でも認可されました。ただ,いずれも副作用があるのが問題です。それからプロテアーゼ阻害剤のインディナビル,これが最近認可されました。これが使えるようになってから,AIDSの治療がたいへん進歩しました。

いつからその治療を始めるかという問題についてはいろいろな意見のあるところですが,最近は早期に始めたほうがいいという考え方が強くなってきました。AIDSに関連した症状のある人は当然治療をします。

 

 

 

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