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先日微熱と肝障害で入院された人がありましたが,3カ月前に調べたときは梅毒反応は陰性だったのですが,今回入院されたときは陽性になっていて,よく見たら初期硬結の症状もまだ残っていました。梅毒に対する治療を行ったところ,肝機能障害も正常化して,発熱も見られなくなりました。この症例は第2期の梅毒による発熱と肝炎だったのです。それらは治療でよくなりました。第2期の症状もやがては自然に治まります。

その後,長い早期潜伏梅毒の時期が続きます。感染して約3年後までです。この時期は症状がなくて,血清学的な反応でしか診断がつきません。ただ,治療せずに放置しておくと,第2期の症状の再燃が約25%の例に見られます。この時期にたまたま人間ドックで血液の梅毒検査で発見されることもあるわけです。

晩期梅毒は感染して3年以上経過して起こるもので,無治療例では約3分の1に起こるといわれています。これはさまざまな臓器病変が起こっている状況です。たとえば神経梅毒で,髄膜炎,脳血管系病変,脳神経麻痺,視神経障害等が起こります。

先日,50歳の男性が視力障害で発症し,はじめは眼科を受診しました。両方の視神経乳頭に浮腫があるのでいろいろ原因を調べたら血清梅毒反応が陽性でした。脳のCT検査では何も異常はないのですが,髄液を調べたら髄膜炎の所見がありました。頭痛はないのですが,髄液の梅毒反応も陽性であり,梅毒性の髄膜炎プラス視神経炎と診断しました。内科に入院して,ペニシリンGの大量点滴静注で2週間治療して,視力障害もすべて回復しました。

梅毒がさらに進行しますと,脳の細胞が脱落して進行性麻痺といわれる状態になり,性格変化,知能低下などを起こすことがあります。これは感染後15年から20年くらいして起こります。なかには精神病院に入院している人もあるようです。それから脊髄癆,これは脊髄が障害されて

 

 

 

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