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日本の貧しい医療の実情

「3時間待ちの3分診療」――この言葉は日本の医療の実情を現したものとしてどなたもご存じでしょう。

病院の外来はどこでも,まるでお祭りの雑踏のように混み合っています。東京の大病院では一日の外来患者の数は2,000人,3,000人というところが少なくなく,大学病院の中には一日4,000人を超すというところもあります。私の働いている聖路加国際病院でも平日は2,200人もの外来患者が受診されます。10年ほど前に新しく病院を設計したときには外来患者を一日1,500人として予測していましたが,いよいよ5年前に開院してからは,予想をはるかに超える患者数となり,休日の翌日の外来患者数は2,500人にも達することがありました。そのため待合いのホールもたいへん混み合い,ゆっくり腰掛けて待っていただくこともできないような状態です。そして何より困るのは,診察室で患者さんの訴えられる病状に医師が時間をかけてじっくりと耳を傾けることができないことです。

新患の場合には少し余分の時間をかけて病歴をとりますが,再来患者になると5分とか,わずか3分の診察時間では,医師は患者さんの問診からどれだけの情報が入手できるでしょうか。みなさんもよくご存知でしょうが,忙しい医師は何やらカルテに書き込んでいて,正面きって患者と顔を合わせようとしてくれない。「検査,薬,はい次の方」と,まるでベルトコンベアに載せたように対処するだけです。そのような風景が日本中の大病院の外来で見られるの

 

 

 

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