厚生省人口問題研究所では国税調査の結果をもとに日本の将来推計人口を発表していますが、平成3年('91)から平成37年(2025)までの34年間をその推計期間とし、高位、中位、低位の将来人口推移を設けており、さらに平成102年(2090)までの参考推計値も付け加えられています。
この推計によると、高位推計では平成3年('91)年から直ちに上昇に転じ、平成37年(2025)には2.09の水準に到達されるものとしていますが、1.80までに回復するという前提に立つ中位推計では、高齢化のピークは平成56年(2044)の28.4%となっており、平成32年(2020)には4人に1人が高齢者という超高齢化社会の到来といわれています。さらに1.45の水準にとどまるという前提に立つ低位推計によれば、高齢化のピークは平成65年(2050)の33.3%にまで高まり、国民の3人に1人は高齢者という状態になるものと予想されています。
このように、高齢化とは人口構造が高齢化し、人口に占める高齢者の割合が増加していくことですが、平均寿命が延びて高齢者の数が増加したり、出生率が低下して相対的に若い人口が減少することによっても高齢化は影響を受けます。
家族形成の変容
人口増加が顕著となった大正14年('25)から昭和25年('50)まで生まれた世代は、多産多死の時期に生まれたため兄弟姉妹は4〜5人と多く、人口転換期世代といわれています。これらの世代が結婚をし、家族を形成していく段階では第一次ベビーブームとして出生率は高まったものの、核家族化し自らの子どもは2人という多産少死への人口転換を担い、出生率転換期ともいわれています。
昭和33年('58)から48年('73)にかけては、20歳代の出生力が横這いかむしろ上昇傾向にあったものの、30歳代で高齢出産忌避の風潮もあり下降傾向にありました。また第二次ベビーブームの到来により出生数も増加し合計特殊出生率安定期ともいわれています。
昭和49年('74)年以降の出生数では、第一次ベビーブームのいわゆる団塊の世代の人たちが適齢期を過ぎ、第二次ベビーブームの人たちが適齢期を迎えていない、いわば適齢期の人たちの谷間であることと、出生率が年々低下記録を更新しており、少産少死という人口転機が起きていることから出生率再低下期ともいわれています。
かつてわが国では、祖父母、息子夫婦、子どもなどが同一の世帯に同居する多世代同居が普通であり、いわゆる大家族が社会の基礎的単位となっていました。
しかし出産率転換期世代による核家族化が一般化し、高度経済成長の過程で産業が第一次産業から第二次、第三次産業へと転換するにつれ、多くの人々は家の外に働く場をもとめなければならなくなり人口構造の変化も生じてきました。
企業戦士といわれた団塊の世代がもたらした高度経済成長期には、都市部への労働力の集積が豊富な労働力の供給を可能にし単身赴任等による単身所帯も増え、結婚をしない男女が増えている現代も単独世帯が増加し、家族の形態に変容が生じてきている要因となっています。
わが国における家族類型世帯数の変化をみてみると、戦後、普通世帯の総数は昭和50年('75)の3,300万世帯から平成7年('95)の4,080万世帯へと20年間で約1.2倍増加しましたが、多世代同居の三世代世帯を中心とする「その他の親族世帯」は750万世帯前後であまり大きな変化は見られません。
他方、夫婦とその家族からなる核家族世帯は1,930万世帯から2,400万世帯へ増え、単独世帯においては60万世帯から920万世帯へと著しく増加しています。