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第5章 超領域科学としての海洋研究

 

本調査を始めるに当たって,われわれは海洋研究のスキームが,近年の科学全体の進展事情を背景に海洋学から海洋科学へと発展した,という認識を前提として,海洋科学は典型的な超領域科学と認定できるとの判断を下した。そして,分野整理学の基本構想が築き上げられ,立体目次の原蟹型できる段階に至り,そうした認識は正当化されたと見られる結果を得た。

 

5-1 立体目次(試作)からみる海洋研究の現状

無作為ではあるが,一応のクラスターができる範囲の研究分野で△△学と名付けられたアイテムについて拾い出した結果,とり敢えず予測通りに,海洋科学をとり巻く下記の8つの分野グローブの成立を見たのは,既述の通りである。

 

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すなわち,自然科学という大枠の中でどのような位置を海洋科学が占めるかが抽出され,かつ,海洋科学の近い広がりが押さえられると共に,周辺の生物学,生態学,地理学とどのような局面でリンクしているかを可視化できた。生物海洋学というこれまであまり聞き慣れない分野名は,従来の海洋生物学と若干二ュアンスを変えたものであり(3-2-3),分野動向理解に役立つ。

地理学との関連では,元来の海洋学がOceanographyとMarine scienceの2方向で用いられたいきさつもあって,前者に“地理”のセンスが含まれていると考えられたせいか,日本語での「海洋地理学」(Marine geography)の位置付けがまだ十分になされていないことが感じられる。

ちなみに,海の科学と言う場合,これは分野名でないことは明らかであるが,人文的なニュアンスも含まれて海学(Marinology)というべき分野名があって差し支えないという実感も得られた。いうならば,上述諸グローブを元とした大型複雑系としての海の研究に相応した新しいネーミングとすべきものかもしれない。

 

5-2 総合的科学研究の方向

上述のMarinologyのように,新しく展開している海の研究の広がりは日毎に大きくなって行っているのであろうから,地球科学→地球学となり,生物学→生物科学と発展してゆくセンスが,さらに海洋学→海洋科目→海学的に拡張されうることが予測される。

関連分野のまとまりである隣接分野グローブとのつながりの広さ自体が,海洋科学の内部分野の多様性と,それらの外への関連の深さを提示するものであり,広域〜超領域の性格の表現であり,おしなべて言えば,海洋科学は総合的科学研究の方向で分野拡大を遂げてきた,と理解できる素材が提供されていると見てよかろう。

 

 

 

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