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ある一定の粒子から成る堆積物が「すじ状」に入るのをラミナと呼んでいる。このラミナの入り方により水流方向がわかるとともに,この地層は浅い堆積盆地の正常な水流により生成されたと推定できる。また,火山灰堆積物(凝灰岩)があれば,当時の火山活動の様子が推定できるし,熱水による変質作用が見られればこれも火山活動の一環を示すものとなる。この他,断層があれば当時の地震活動を示すことになろうし,氷河地形があれば当時の気候を示すことになる。いずれにしても古環境推定はいろいろなデータを集めて総合的に判断しなければならないので,正しく複雑系の学問であると言える。

 

3. 変わる現在の海洋環境

古環境を推定するのに,現在の海洋環境の研究成果を利用するのだが,その現在の海洋環境が少しずつ変わりだしている。これは自然の営力の変化により変わったものではなく,人間の生活変化や各種の開発行為の結果もたらされたものである。

例えば,大,中河川には大きなダム,小さな枝沢にも多くの砂防ダムが建設されてきた。

この影響により,堆積物が海洋にまで到達しなくなっている。海洋での堆積物の減少により今までの安定していた環境がくずれ,海岸が侵食されたり,堆積物が変化したりしている所が見られる。開発により粘土,シルト分が大量に一気に海に流れ込んだため,サンゴ礁が死滅したりしている所もあるし,港湾の整備により沿岸流の流れが変わり,それに伴い堆積物も変わってしまったりしている。長良川河口堰や諫早湾の干拓事業による環境の大変化なども問題である。また,ビニール,プラスチック,ガラス片等腐りにくいものが堆積物と一緒に海洋に流れ込み,堆積物の1つとなっていくのも因ったことである。

 

3-3-4 「アジアにおける“海の世界”と“陸の世界”―ひとつの文明史的考察」?

 

はじめに

この小論は,アジアにおける“海の世界”と“陸の世界”について,文明史的視座に立って,巨視的に比較をおこなおうとするものである。

ここで“海の世界”というのは,島嶼部や半島部のおもに沿岸地方を意味している。その典型的イメージは島嶼部東南アジアの多島海地域を指す。この地域は中国文明圏とインド文明圏の中間に位置し,古来,それらの橋渡しに場を提供してきた。さらに,西アジアからのイスラーム文明も伝わり,世界文明の十字路としての役割をも果たしてきたのである。

 

 

 

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