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海底熱水鉱床のところで説明したように,これらの鉱床は陸域のキースラーガー型鉱床や黒鉱型鉱床に類似している。したがって,これらの型の鉱床の生成期機構の解明と探査指針の抽出にとって,海底熱水鉱床の調査結果は大きな示唆を与える。最古の海底の年齢は約2億年であり,それより古い海底は大陸下に沈み込んだか,付加されたと考えられている。沈み込んだ海底の一部は,その後陸域での火成活動により,再び地表に現れている。この過程で,各種のマグマ成鉱床が形成されている。特に,熟水成鉱床の鉱化流体の一部は,海洋地殻に取り込まれていた海水である。

最も消費量の多い工業鉱物資源として,方解石(CaC03)を主成分とする石灰岩がある。この石灰岩の大部分は,サンゴや有孔虫など石灰質殻をもつ生物の遺骸である。これらの生物は,海水中に溶存するカルシウムイオン(Ca2+)と炭酸水素イオン(HC03-)から炭酸カルシウム(CaC03)を合成している。そこで,現在では,温室効果ガスである二酸化炭素の固定にサンゴが貢献するのではないかと期待されている。

以上述べてきたことから明らかなように,海水および海産物,深海底のマンガン団塊,海山の富コバルトクラスト,拡大軸や背孤海盆の海底熱水鉱床,海洋底下のメタン水和物鉱床など海洋独自の資源はもちろん,大陸棚や純粋の陸域に分布が限られる石油,石炭,鉱物資源の鉱床も,海洋が存在しなければ,ほどんど形成されなかったと結論される。この意味で,各種鉱床の生成機構の解明とそれにもとづく探査,さらには資源量の評価と予測にとって,海洋科学的研究は不可欠である。

 

3-3-2 地球科学教育における海洋教材の取り扱いについて

戦後,わが国の中学校,高等学校の教育課程・学習指導要領は,ほぼ10年の周期で改訂されている。この改訂はいずれもその時代の社会的要請に適ったものといわれているが,理科の場合,その変容はあまりにも大きく,学習内容の構成に関する理念と教材の価値観を疑わせる。海洋教材の取り扱いの変遷を時代別に示すとつぎのようである。

 

1. 生活に直結した問題解決学習時代(中: 1947〜1961年,高: 1948〜1962年)

中学校の第3学年の理科に「海はどのように利用されているか」という単元があり,先ず身近な海水について理学的な基本事項を学ぶようになっていた。

1961年に中学校の理科教師になった筆者は,その年,広島県教育委員会のはからいで小型の練習船に乗り,海水表面温度の測定,海水の水色の観測,海水の透明度の測定,プランクトンネットを用いてのプランクトンの採集と同定,海流の方向の推測,冷水

 

 

 

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