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ので,自らの「臨床的直感」から,患者にXという行動をやめさせた。

この事例においてF,G氏は「機能連関研究」をめざし,H氏は「メカニズム追求研究」をめざし,I氏は「特性指向研究」をめざしている。このように,上にのべた理論的定義は,「異分野間摩擦を説明するのに役立つ」という内的妥当性をもつことになるのである(12,13)。これは3-1,3-2,のように手続きによる妥当性を獲得するのと異なる方向である。

このように領域間距離を定義するやりかたには,さまざまなものが存在している。研究の目的にあった方法論が選択されるべきであろう。

以上,本稿ではscience-mapの方法論について,科学の研究領域および領域間の距離をいかに定義するかに焦点をあてて考察を行った。学際研究それ自体を研究対象とするために,これらは有力な分析手段となると考えられる。

 

3-2 海洋科学の諸局面(各論事例)

 

3-2-1 海洋学から海洋科学へ

本来「海洋学」という呼び方の中には,2つの要素を内在していた。その1つは,海洋の学: Oceanologyであり,他の1つは,いわば海洋誌: Oceanographyである。おそらく,理念的には

Oceanology。膂ceanography

の関係が成り立つのであろう。

海洋の諸事象を記述することが主務であるOceanographyには,従って波,海流,水質,生物相,気象と海象などのアイテムが含まれている。Oceanologyは,広範な視点で海洋関連の文化や政治・経済,地理,民族,民俗学などもとりあげることができる懐の深さを持っていると考えてよかろう。

以上のような捉え方は,大変クラシックな扱いであり,古典海洋学と呼んで差支えなかろう。北欧,英国,ポルトガル,スペイン,イタリア等,いわゆる海洋国家が航海や貿易を介して蓄積してきた学問の広がりであり,それを古典的自然科学の手法でとり扱う局面であるとしてよかろう。

同じく海洋国である日本は,それではどのように海洋学に貢献できたのであろうか。海洋にも地理的なregeonalismが存在するのは確かであるから,海洋誌についてはそれなりに大きな成果を挙げている。島国であるから島の集合体をとり囲む多島海環境についての海

 

 

 

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