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海洋研究全般の今後の振興に寄与するよう企画した。

 

1-2 目的

21世紀を間近に控え,世界は政治的にも,経済的にも激しく流動して様々な問題が顕在化する一方,地球環境変動に大きな関わりを有する海洋科学関連の課題もまた山積して目に映るようになってきた。海洋は,生物資源や鉱物資源等,膨大な資源を包蔵するとともに広大な空間を占めており,人類の生存を長期にわたって確保しようという観点に立てば,その有効な開発利用と適切な保全は他の何物にも代え難い重要な課題であることは自明であり,そこにおいて海洋科学の果たす役割は計り知れぬほど大きい。

科学技術の進歩に伴い,研究の世界では科学技術の細分化,複合化さらに深化と様々な方向に高度化がおこり,加えて学際的・総合的な展開と国際的な協力態勢に主体的にかかわることによって,開かれた研究社会への発展をめざす新たな研究領域が急速に増大しつつある。

学問領域におけるこのような展開は,従来の科学技術の枠組みにはない発想や総合的アプローチによって我々が予想し得なかった発展をもたらす可能性も秘めている。そのような進展の確実度をさらに高めるためには,既存学問分野という厚い壁を超えた人の交流や協力が可能な研究世界を築く必要があろう。

そうした中において,海洋科学技術関連の研究も,研究の位置付け,他分野との関わりなど,取組む研究の在り方が一層多様性と複雑性を増し,一つの専門に深く関わってきた旧来の研究者や,これから新しい仕事を展開しようとする若手研究者にとっては研究世界の全体像が見えにくく,それは研究者個人の情報把握力をはるかに超えるものとなってきている。

海洋は人間環境の主要部分であり,そこでは広汎多岐にわたる現象が生起している。海洋での現象は物理的・生物的・地学的等の過程が複雑に入り混じった集合であるから,それらを対象にもつ海洋科学は,自然を研究するのに使われるあらゆる科学的手法・原理を取り入れる必要があることは言うまでもない。

このような背景のもとに,海洋に関わる複雑系〜複合体の全体像の中におけるこれまで把握しにくかった学問全体の発展形状,要素還元主義に立つ既存学問分野と分化を遂げた研究最先端を占める各個別分野との位置(相関)関係の確認,あるいは新分野に育つ可能性のある空白域の発見ならびに個々の学問分野の位置付けなどの明確化を図るため,コンピュータグラフィックスの表示により各学問分野の関連を三次元的配置において捉えると同時に,視覚的にわかり易く表現し,科学分野分布の枠組みや部分構造の理解を援けるとともに海洋科学・技術追求への契機と研究発掘並びに研究展開への探査追究に役立てることを考え,また海洋研究の振興ならびに学問整理の一助となることを目的とする。

 

 

 

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