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科学の発展を認識する一つの手法として,関係する研究分野の数を調べるのは或る程度有効と考えられている。学問は時代と共に分化の度合いを強めてきた,という一般的傾向が存在するからである。

近年,高度科学技術時代と呼ばれる時代になったが,学問や研究分野が細分化され,しかも広域に亘るケースの増大という現象を伴っているために,実態把握が容易でない事情が発生してきた。研究の全体像を眺める,という発想は,意外にニーズがなかった。分化した専門分野で精力的に活動することが重要と理解されていたからである。

広域科学とか超領域科学,あるいは関連して総合の科学,統合の科学,システム思考,サイバネティクスなどの言葉が,複雑系の認識をめぐって飛び交う世界が現実化したといえる。生命,環境,情報,地球といった複雑系かつ巨大システムという存在が,世界的に重視される時代ともなった。

海洋に関する研究は古くから幅広く行われて来て,現代では海洋科学として包括される超領域科学の面目躍如たるものがある,と言って差し支えない。海の日の制定,国際海洋年の到来など周辺事情の急速な展開にもバックアップされ,日本国内のみならず,グローバルに海洋への注目が集まっている時期に当たり,科学者系委員を多く擁している日本科学協会として,分野整理を促進することに意義を見出し,ここに「超領域科学としての海洋科学」の基礎として,分野整理学を開拓することにした。海洋科学は日本の基幹科学であってよい。

科学分野整理学には未だ多くの残された課題があるが,当協会としては,整理学としての一つのモデルソフトを開発し,事例を挙げて,立体目次の完成を目指すことにした。本報告書は,そのような研究活動の第1段階の総括であり,今後関係各位の御批判を仰ぎながら発展を期したいと願っている。

 

1998年3月

財団法人 日本科学協会

理事長 濱田 隆士

 

 

 

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