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第6章 給与

 

公務員の給与は、1995年に制定された俸給・官職手当法に定められている。同法の所管大臣は首相。

 

1 給与決定の仕組み・原則

(1) 給与決定の仕組み

給与決定の仕組みは以下のようになっている。

国家給与委員会から内閣に対する給与の勧告→内閣による給与改訂案の決定→俸給・官職手当法改訂案の国会への提出→国会による議決→国王による裁可ただし、各給与等級、ステップについて均一の比率で俸給を改訂する場合で、改定率が10%未満の場合は、法律を改正する必要はなく、国会による予算の承認を受ければ、王室令により俸給を改訂することができる。その場合、王室令で定める俸給額が俸給・官職手当法の俸給額とみなされる。従って、10%を超える俸給改訂や、等級・ステップに均一でない俸給改訂、官職手当の改訂は、俸給・官職手当法の改正を要し、国会による議決が必要となる。

給与改訂案を作成する際には、生計費、民間の給与、政府の財政状況、各職種の給与格差を考慮し、人事委員会、その他の人事管理委員会、予算局、大蔵省の意見を聴取して、国家給与委員会が作成する。

俸給の改訂は数年おきに行われており、1980年以降の俸給改訂は以下のようになっている。現在の俸給は1994年10月以降、改訂されていない。

1980年 20.0%    1982年 16.0%   1989年 14.0%

1990年 13.0%    1992年 25.0%   1994年 14.7%

(2) 給与決定の原則

給与を決定する際には、以下の原則を考慮することになっている。

・ 実質労働に見合った給与の原則:労働の難易度に応じた給与

・ 民間部門との競合性の原則:公務員の給与と民間部門・公営企業との給与の均衡

・ 給与は生活を保障するに十分であること:基本的な生活上の需要をみたす上で必要な最低賃金を上回るものでなければならない

・ 政府の支払い能力の範囲内であること:人件費総額を政府予算の40%以内にすること(1997年の総人件費は政府支出の35%を占めている。)

2 国家給与委員会(NCC)

国家給与委員会(National Compensation Committee)は、俸給・官職手当法により定められている機関で、軍人を含む公務員の給与、手当、福利厚生などに関し、内閣に対し勧告し、また、内閣と協議する権限を有している。勧告・協議に際して国家給与委員会は、人事管理機関、大蔵省からの情報や意見を聴取し、生計費、民間給与、財政状況、職種ごとの給与などを考慮しなければならないことになっている。

国家給与委員会は、大蔵大臣を議長とし、10人の官職指定委員(首相府、大蔵省、商務省、労働・社会福祉省の各事務次官、予算局長、国家経済社会開発委員会の事務総長、国家統計局の事務総長、タイ銀行の総裁、人事委員会の事務総長、会計検査局の局長)、7つの人事管理機関(軍事人事委員会、警察人事委員会、教職委員会、大学職員人事委員会、立法機関人事委員会、司法人事委員会、検察官人事委員会)の代表各1人、行政、経営管理に通じた者で、経済や給与に関して知識、経験を有する5人の学識経験者の計23名から構成される。なお、任命委員である学識経験者委員の任期は2年(再任可能)となっている。委員会成立の定足数は委員の半数以上で、議決は出席者の多数により、可否同数のときは議長が決する。

国家給与委員会の事務局は、人事委員会の事務総長がNCCの事務局長を兼務し、会計検査局の局長が事務局次長となっており、実務は人事委員会事務局の給与担当部署が担っている。

1995年以前は、各職種ごとに給与法が存在し、各所管の人事管理機関が当該職種の給与改定について内閣に勧告するという方法を採っていた。実際には、人事委員会が行う一般公務員俸給表の改訂勧告を見て、他の人事管理機関は一般公務員俸給表勧告に上乗せする形で所管の俸給表の改訂勧告を行うのが一般的であった。その結果、一般公務員の俸給は他の職種の俸給よりも低くなるという傾向があった。例えば、修士号を有する者が一般公務員に採用されてから退職するまでに得る給与総額は、裁判官の場合の55%、検察官の76%、大学教授の93%となっていた。また、事務次官の俸給は検事副総長(Deputy General Attorney)、警察局長官(Director-General of the Police Department)の俸給より低かった。国家給与委員会が設置され、すべての職種について統一的に給与改定を勧告するようになってから、こうした傾向は解消されつつある。

 

 

 

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