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5.年俸制の問題点〔67・68表参照〕

企業における年俸制の導入が取り上げられている昨今ではあるが、その導入割合は、当研究所が行った平成7年調査においては回答企業379社中7.9%の30社に止どまっていた。前述のとおり今回の調査においても回答企業343社中14.6%の50社と、この2年間において、その増加も騒がれている程ではなかったように思われる。しかし、各企業が現在重圧に苦しんでいる人件費負担を合理化する方法として最も追求しているのは、賃金制度とその運用においての業績主義を貫くことであり、その為、年俸制はその極めて有効な手段とされている。

この年俸制が、遅々として進まないのにはどのような困難性が理由となっているのか、その問題点を、制度の導入の有無にかかわらず、前回の平成7年調査に引き続いて全ての企業について調査してみた。

(1) 導入を難しくさせる要因

まず第一に、各企業が導入を困難にさせている要因として、「評価の方法・基準の策定(客観性・公平性を含む)の困難性」を挙げている。これは回答企業332社中の80.1%と最も高く、次いで「業績評価の困難性」が77.7%、「目標達成度の測定の困難性」が72%と7割台の高率となっている。前回の平成7年調査においても、その傾向は同様(84%、79.1%、69.4%)であり変化はみられなかった。

また、これらについて特に重要な問題点として絞って調査してみた結果についても「評価の方法・基準の策定の困難性」が47%とおおむね過半数を占め最高で、次いで「業績評価の困難性」の40.4%、「目標達成度の測定の困難性」の28.3%と同様の傾向となっている。つまり、業績等の測定・評価と、その評価の方法・基準を客観的、公平的に策定することの難しさが、年俸制を導入するための最大の問題点となっている。

(2)その他の問題点

上述した困難性の他、3〜5割の企業で問題点として指摘している点は、「業務遂行目標設定の困難性」(56.9%)、「職務内容の限定・客観性」(38.0%)及び「環境変化に対応した評価基準の変化の困難性」(35.5%)を挙げている。

また、導入のマイナス面については、「直接業績に結び付かない仕事に手を出さなくなる」が35.5%と4割近くの企業で挙げており、「組織の和・協調性へのマイナス面」が20.5%、「労使関係への影響」が14.8%となっている。これらのマイナス面は、いわゆる日本的経営のメリット面を打ち消すものであり、年俸制導入にあたっては、今後この面での流れを調査していく必要があろう。

これらの状況を企業規模別にみても、「千人未満」の小企業から「5千人以上」の大企業ともども、その傾向は同様のものとなっている。

 

 

 

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