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いう試み自体に意味がないことになります。もしかすると、そういう試み自体に意味がないという議論もあり得るだろうとは思います。

しかし、差し当たり私どものプロジェクトでは、スタンダーダイズをして、ある程度危険は冒しつつも比較を試みるということに意味があるという前提で出発しております。その上で、概念とか、定義とかの違い、とりわけ商品の定義、あるいは産業の定義、あるいは商品が同じ名前でも内容が違うとか、今まであった商品がなくなるとか、新しいものが登場するとか、そういう問題については、もちろんおっしゃる通りできるだけ最善の対応をいたします。

地理的範囲の変化も、非常に頭の痛い問題で、例えばインドがパキスタンとインドとバングラデッシュに別れてしまった時どうするか、というような問題がありますし、朝鮮についても、それが韓国と北朝鮮に別れたのをどういうふうに扱うかという問題があります。

限界はありますけれども、ある程度は人為的に、例えばインドの場合でしたら、インドとパキスタンとバングラデッシュに分ける、その地理ごとのデータを戦前についても作ることも一応はできますね。そこで、それをある程度試みるつもりでおりますけれども、考え方によっては、そういう分割をしても意味がないとおっしゃる方もあるかもわかりません。

いずれにしても、ご指摘の点についてそれぞれ十分の留意をしたいと思っています。

そこで、それに関係して3番目のコメントですが、いろいろな統計の原資料の欠陥があるに違いないので、それについても十分解説を付ける必要がある。これも、統計の最終的な成果は、通常並べるだけでなくて、できるだけ資料批判的なコメントを記載して、外部からそれにアクセスできるようにしたいと思っております。

ちなみに、さっき言うのを忘れましたけれども、最終的な成果は、できれば刊行物とインターネットでアクセスできるような形の両方で、関心のある方に見ていただけるようにしたいと思っています。

4番目のコメントは、かなり手痛いコメントでした。データに欠陥があったり、あるいは欠損値があったりする時、あるいは、戦前と戦後で商品とか、産業分類とかが違う時に、コンバージョン・マトリックスを作って、それで変えてつながるようにするのだとかいうことがここに書いてあるわけですけれども、そういうことを現地の事情を知らない人がやると、とんでもない初歩的な間違いをするから、気を付けなければいけない。

これはおっしゃる通りで、そういう間違えが起こらないように、できるだけ、そのデータを作った方々のご意見も伺いながら作業をするつもりでいます。しかしまあ所詮、日本の研究者が中心に立ってやりますので、今ご指摘のあったような間違いは時に犯すかもわかりません。あえて少し強弁をすれば、このプロジェクトのような作業は、原データのプロデューサーの方は問題点をよくご承知だからあえてなさらないのを、知らないがゆえに無茶なことをやる。それによってかえってデータの性格が分かるというようなことにもしなれば、知的な試みとしては、(危険な試みであっても)意味がないとは言えないのではないかと思います。

 

 

 

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