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ンディングで撮影がすぐ始まりました。でも、いったん始めるや私は「全部駄目だ!」と言ったのです。その時助監督は苦労しました。彼は、撮影のスケジュールやロケーションや技術的な細かい点をケアしなければならないのですから。しかし、私にはこうする以外どうしようもなかったのです。これでは正しくないと感じたのです。

―――香港の王家衛監督が、やはり脚本なしで撮るという話は有名ですが、それについてどう思われますか。あなたと彼は同じことを目指しているのでしょうか。あるいは、王家衛の方法はあなたのとは違うと思われますか。(★3)

陳:違うと思いますね。王家衛がどのような方法で撮るのか、本当のところは私には分かりません。彼の撮影現場を見たことはありませんから。しかし、完成した映画を見る限り、彼が脚本なしに撮る理由は、彼は自分が書くものより、何かもっと良いものを欲しているからではないかと思います。しかし私の場合は、全く彼とは違います。私が脚本なしで撮るのは、私が何かを掴みたいと思っているからです。

―――掴みたい……。

陳:私の周囲の人々を掴みたいのです。私は、彼らの表情を見て、彼らの言葉を聞きたいのです。私は周囲の人々が話すのを見たいのです。王家衛は、常にスーパースターと仕事をしています。スーパースターからはスーパースターしか掴めないのです。スーパースターからは、普通の人を引き出すことはできないのです。それは不可能なのです。ロバート・デ・ニーロでさえ、常にロバート・デ・ニーロなのです。彼はタクシー運転手ではありえない。それは偽りなのです。王家衛の作品から私が感じ取るのは、「偽り」です。しかし、「偽り」は非常に面白いことがしばしばあります。偽りや見せかけは、退屈ではないのです。とは言え、私は現実のドラマに興味があるのでもありません。私が興味があるのは、自分の周囲の人に耳を傾けることができるのか、ということです。本当に耳を傾けることが。将来の映画では、1人の女優と1人の男優、あるいは3人の女優と3人の男優を中心に作品を作ることもあるかもしれませんが、今回の場合は、私は30人の男の声を聞きたかったのです。

 

“結婚相手募集中”

 

―――今回の作品は、女優は劉若英(★4)1人であとはほとんどすべて男でしたね。劉若英が結婚相手の男を求めて、次々と男たちとお見合い、というか面談をしていく……。

陳:はい。女優は1人だけ。そして30人の男でした。30人の男のうち一部がプロ俳優で、残りの20人はさまざまなところから集めてきました。私は新聞広告を出し、この映画に参加する男性を募集したのです。約600人の応募がありました。その中から約20人にしぼりました。彼らをビデオカメラで撮影しながらインタビューしました。彼らと私との会話を記録したのです。そして、その会話の中からある要素を抽出しました。そして、彼らに結婚のための面接に来ているという会話をしてもらいました。で、それを撮影したのです。

―――なるほど。その新聞広告は今このオフィスにありますか。

陳:早くその質問をしてくれると良かったんだけど……。私のクルーはどこにそれがしまってあるか知っているけど、もう帰

 

 

 

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