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?章 調査研究の概要

 

1. 調査の目的と内容

 

1) 調査の目的

 

障害者基本法(1993年)、精神保健福祉法(1995年)の成立によって、日常生活や、社会生活上の支障を有する精神障害者も、他の障害者や高齢者等と同様に、保健・福祉的な施策に基づく援助を受けながら、住み慣れた地域で生活を送る権利があることが法的にも明確に位置づけられた。

しかし、長い間、精神障害者は、社会的恐怖の代名詞として排除の対象とされてきた経緯がある。一般社会では、施設反対運動や職場からの排除がしばしば経験される。また、政策立案の過程においても、早くから他の障害者や高齢者が福祉施策の対象とされてきたのに対し、精神障害者は医療対策の枠組みの中で扱われ、福祉施策の対象として位置づけられずにきた。

昨今になって精神障害者は、ようやく地域における保健福祉施策の対象となった。本当の意味で、精神障害者が地域の中で、充実した生活を送れるように今後も制度・施策を整えていく必要があるだろう。

本研究の目的は、第一に、昨今の精神保健福祉の流れを確実なものにするためにも、精神障害や施策に対する国民の意識の所在を明らかにし、その結果を踏まえ、今後の施策発展の可能性を模索し、提言すること。

第二に、精神病・精神障害者に対する偏見の是正、及びに啓発をより効果的に行うために、ソーシャルマーケティングの手法を取り入れ、メッセージの受け手となる対象者群、メッセージ内容、アプローチの方法などを分析し、今後の啓発運動のいくつかのあり方を提言したい。

第三に、精神障害者を取り巻く問題の中から特に「差別的な病名の問題」を取り上げ、この問題における国民意識の所在について検証し、今後の課題を検討したい。

 

【目的のまとめ】

目的1:精神障害や施策に対する国民の意識の所在を明らかにし、それを元に今後の施策発展の可能性を明らかにしたい。

目的2:ソーシャルマーケティングの手法なども取り入れながら、一般社会において根強く残る精神病・精神障害者に対する偏見の是正、及びに啓発を推進する方向性を模索する。

目的3:差別的な病名の問題、事件報道問題など、現代の社会において改善の必要があると考えられる諸問題に対する国民意識の所在についても検証する。

 

 

 

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