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は じ め に

 

このたび、日本財団のひとかたならぬご好意とご尽力を得て、こころの健康についての市民調査を実施することができました。この問題についての詳細かつ大規模のアンケート調査としては、去る1983年に当会が実施したもの((財)全国精神障害者家族会連合会・精神障害者福祉基盤研究会・精神障害者の社会復帰・福祉施策形成基盤に関する調査)がありますが、そのときの市民調査は東京都区民を対象としたもので、今回のような全国レベルの市民調査は当会としても初めてのものであります。もちろんわが国として初めてのもので、このような調査の機会を与えていただいた日本財団には深い感謝を捧げるものであります。

振り返りますと、市民調査に並行して有識者、保健医療福祉専門職、精神障害者家族それぞれのグループを同時に対象にした前回の調査は、私どもにとって印象深いことが数多くありました。とりわけ「精神障害者は長期にわたり入院させておくのがよい」といういわゆる“収容施設パラダイス論”が少数派であったこと、逆に「他の病者・障害者のように自助活動ができる」とする意見がどのグループででも多数派であったことなどが強く印象に残っています。当然、こちらの側に、先回り的、否定的な思い込みがあったという反省も脳裏に染み付いているところです。また、どの対象グループでも、改善のための運動の担い手として第1位に家族会があがっていたことに、身の引き締まる思いがしたことも昨日のように思い出します。

今回の調査は、これら前回の調査の経験をも踏まえて実施されたものですが、もちろん新しい観点が少なからず含まれています。時間がやや切迫した中ではありましたが、幸い研究企画委員会委員長の吉川武彦日立精神・神経センター精神保健研究所長、実行委員会委員長の竹島正同研究所精神保健計画部長のご指導とご協力をいただき、多方面からの有為の人材のご支援を得て、充実した調査を実現できたと密かに自負するものであります。

調査実施後、過日行われた研究会では、研究班員の方々それぞれの切り口からのご報告をお伺いする機会を得ましたが、いずれもたいへん興味深いものでありました。この報告書に盛られた結果は、まだスタートラインでの分析も含まれ、今後分析が続けられるものも多くあると存じますが、まずはこの段階でのお目どおしと、結果の共有をお願いするものであります。

 

1998年3月31日

 

(財)全国精神障害者家族会連合会

保健福祉研究所

所長 岡上和雄

 

 

 

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