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公海の自由航行プロジェクト委託研究

最近の米国におけるシーパワー研究

Research On Maritime Issues

ヴァンダービルト大学教授

ジェームズ・E・アワー

 

米国国防総省国防次官の日本担当特別補佐官として勤務した1979年から1988年の10年間に、私には、日米を問わずジャーナリストのインタヴューを一度たりともを断った記憶はない。日米の研究者、大学生、企業からの様々な情報提供にも全部応じたつもりである。そのために、夜遅くまで仕事を終える事がなかなかできなかったが、こうした質問に答えることを私は最も重要な仕事であると思っていた。

 

日本人が自分達は海上事情に無知であり、アメリカ人は大変によく事情に通じていると錯覚していることが、私には不思議であった。私の10年間の経験からすれば、日本人もアメリカ人もこの問題に特別に詳しいというわけでもない。むしろ日本人が、自分達で思いこんでいるほどには事情に疎くはないことは明らかである。

 

日本もアメリカも島国である。日本はアメリカを島国と思わないが、アメリカだって島国なのである。両国とも間違いなく海洋国であるにも関わらず、ほとんどの人達は陸を中心に生活をしているためにこの事に本当には気付いていない。しかし、両国が島国であり海洋国であり、しかも世界の経済2大国であることは厳然たる事実である。特に日米両国は、選挙結果で政府の政策方針が決まる民主主義国家であるから、日米両国民が海上事情をよく理解をすることは、とりわけ重要なのである。

 

湾岸危機後、アメリカは、全軍事力を今後どういうふうに組織立てしていくべきかという問題に考えあぐねてきた。見直しの中には海軍も含まれる。

日本も自衛隊について同様な問題を考えてきた。しかも日本は、集団的自衛権を正当に行使できるかどうかのより重大な問題を抱えている。

しかし、アメリカが現存する唯一の軍事的なスーパーパワーである事実を鑑みると、日本が将来、集団的自衛権を行使できるか否かの問題は、むしろアメリカにとってより深刻な事情を含むのである。

 

公海の自由航行プロジェクトから委託された調査報告書の中で、われわれは、海洋問題について主要な論文を紹介するが、特に米国海軍が、1994年以来アメリカで関心の対象になっている海洋の利益を守るために何をしようとしているのか、また、将来展望に関するいくつかの意見を紹介する。

 

米国海軍は、1980年代中頃に「海上戦略」(The Maritime Strategy)を公表し

 

 

 

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