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リアなどを外側三日月型地帯(Outeror Insular Crescent)と名付けた。そして、今は未開発であるハートランドが、やがて陸上交通(鉄道や道路網)や産業が発展しすれば、内陸部にエネルギーが蓄積され、ここを根拠としたランドパワーが沿岸地域に及んでいるシーパワーを駆逐し、やがてはシーパワーを圧倒するであろうと主張した(6)。

 

(2)スパイクマンの理論

アメリカの地政学者スパイクマンはマッキンダーより32才若く、マッキンダーやハウスホーファーの影響を受けたが、特異な「リムランド(Rimland)」理論を唱えて出現した。スパイクマンは1944年に出版した『平和の地政学』で、世界はランドパワーとシーパワーが対立するという単純なものではなく、ハートランドの周辺地帯でハートランドの力の基礎となり、かつシーパワーの影響が及んでいる地域、すなわちランドパワーとシーパワーの接触している地域をリムランドと呼称し、このリムランドが地政学的に重要である。特にリムランドに位置する日本やイギリスは東アジアまたは西ヨーロッパの西側にあり、政治軍事上に重要である。ヨーロッパ大陸が一大強国に支配されるのを防止するには、ハートランド周辺諸国(リムランド地帯の国々)と共同し、ハートランドの勢力拡張を防ぐべきであると、マッキンダーの警句を修正し「世界を制する者はハートランドを制するもの」でなく、「リムランドを制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界を制す」と主張した(7)。

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アメリカはマハンの『海上権力史論』によって第1次世界大戦でドイツ、第2次世界大戦で日本とドイツを破り世界第1の海軍国となり、その海洋力によって1950年代には世界に君臨した。しかし、第2世界大戦が終わると大陸国家のソ連が台頭し、マッキンダーのハートランド理論は、ドイツの代わりにソ連が主人公となった他は、彼の予言どおり実現したかに見えた。ソ連は巨大な外向力をもって着々と内側三日月型地帯を勢力下に収め、次いでアフリカなどの外側三日月型地帯にも進出した。ソ連は東欧を制してマッキンダ

 

 

 

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