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活空間が大きく拡大されるであろう。

現在の技術力で開発可能な水深は400メートルと言われているが、その面積はアフリカ大陸と同面積で、そこには石油・石炭・硫黄・砂鉄・マンガン・クローム・錫などが埋蔵され、石油が86兆キログラム、天然ガスが40兆立方メートル、マンガンの埋蔵量は陸上の4000倍、コバルトは5000倍、ニッケルは1500倍が埋蔵されていると見積もられている(6)。この他、海水中には金・銀・ウラン・マグネシウムなど60種の元素が含まれているが、その量はマグネシュームが200兆トン、臭素が100兆トン、ヨウ素が750億トン、銀が4億5000万トン、アルミニュームが150億トン、金が600万トンに達するという(7)。また、海を計画的に開発し管理するならば、現在陸上で得られている約300倍の食料が確保可能であり、さらに海洋の持つ潮汐エネルギー・熱エネルギー・波力エネルギーなどの海洋エネルギーを、潮汐発電・温度差発電・波力発電などにより利用するならば、現在の世界のエネルギー需要の1000倍のエネルギーが利用可能となるとの計算もある。このように、海上・海中・海底と3次元の立体空間を持つ海洋は、原子力に次ぐ大きな未来を持つ未開のフロンテアであり、海洋国家は内陸国家に比べ、無限の可能性に恵まれていると言えよう。

しかし、海洋開発技術の進歩発展は海洋資源に対する新たなる収奪欲を生み、海底鉱物資源・漁業資源などに対する沿岸国、特に発展途上国の果てしない領海の拡張、管轄権の拡大をもたらし、グロチュウス(Hugo Grotius)以来海洋を支配してきた、「海は共有物(La Mer Commune)」の理念も各種の制約を受け、海洋利用に対する制約が増しつつある。すなわち、1958年の第1回国連海洋会議では、「漁業資源保護条約」「大陸棚条約」「領海および接続水域に関する条約」が採択され、1973年の第3回国連海洋会議では「新海洋法条約」が採択され、1996年にはわが国も批准した。この新海洋法条約には海底資源の開発、軍艦・大型タンカーの国際海峡通峡、領海拡大を意図した群島理論や直線基線の主張など、各国の国益追求、特に発展途上国の主張が盛り込まれ、海洋を先進工業国が占有していた時代は去ったともいえよう。

 

2 海洋力および海軍力の特性および価値

(1)海洋力・海軍力とは

海洋力(Maritime Power)とはシーパワー(Sea Power)とほぼ同意語であるが、海洋力の方がニュアンス的にはシーパワーよりも広範な組織による力意味している。また、これと同様な言葉として“SLOC(Sea Line of Communication)”や、シーライン(Sea Line)、シー

 

 

 

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