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タリム盆地の荒涼たる砂漠では、踏査だけでも拷問に等しく、しかも地底深く、小さくて見つけにくいくぼ地にかくれた石油を抽出することは極めて困難である。この遠隔地での開発を行うには、パイプライン、道路、電信電話等の施設のために莫大な投資が更に必要となろう。現在、中国の石油生産量において新疆地区の占める割合は7%弱である。国際エネルギー機関(IEA)によれば、この割合は、主要国からの援助がなければ、2010年よりはるか後まで変わらないと見られている。国際的に認められた中国沿岸海域の海底油田についての見通しもごく限られたものである。多国籍企業がすでに渤海湾と同じく、東シナ海、南シナ海において30億ドル以上を注ぎ込んでいるが成果は挙がっていない。

中国が他の諸国と係争中の沿岸海域にある有望な石油についてはもっと明白な障害がある。結局、政府が国民をなだめるための経済成長を必要とする時期に、中国は急増する需要と既存の自国領域内での限られた供給という問題に直面している。

かくして、中国はこの地域の、あるいは世界の石油市場で主要かつ猛烈な競り手になりそうである。最近のアジア太平洋経済協力機構(APEC)の見通しによれば、中国の輸入所要は、2000年までに1日当たり60万バレルから100万バレルに、また2010年までに300万バレルに増大するという。この莫大な量(現在のサウジアラビアの生産量の約半分)は、アジアの石油輸入の約20%に達する。中国シェル石油開発社の見積もりによれば、今から20年後の2015年までに中国の石油輸入量は1日当たり、700万バレル以上に達し、アメリカの現在の輸入量に近づくことになるという。

 

近隣諸国との競合

中国以上に不安定な国際供給に依存する国々から成る北東アジアの中でも、中国は主要な石油輸入国として浮上するものと見られる。石油輸入諸国の中でも際立つた存在は、国内にこれといった供給源がなく、消費するエネルギーの80%以上を輸入に頼っている日本であろう。1970年代から1980年代にかけての節約運動では効果をあげたものの、日本が輸入する燃料は年間500億ドルに達し、これ以上の実質的な削減はほとんど期待できない。

大型の製鉄、造船及び石油化学分野と共に、これまで以上に車の運転中毒症に陥った中流階級が増加を続ける韓国の経済は、日本の経済よりはるかにエネルギー指向型であり、しかも依然として国内のエネルギーの手持ちは少ない。韓国の年間エネルギー輸入額は

 

 

 

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