日本財団 図書館


東アジア中部の海域には多くの小島群があり、境界紛争はこれら小島群の領有権を巡って生じている。例えば、南シナ海において主権争いは顕著である(別添地図1参照)。中国は、南沙諸島を含む南シナ海全域の領有権を主張しているが、その他インドネシア、ブルネイ、マレイシア、フィリピン、台湾及び越等の諸国・地域も南沙諸島の一部の領有権を主張している。同じく南シナ海にある西沙諸島は、中国、台湾及び越が、日本海の北方領土は日本及びロシアが、竹島は日本及び韓国が、そして東シナ海の尖閣諸島は日本及び中国がそれぞれ主権を争っている。

残念なことに領有権問題を解決するために必要な事実の全てが明らかではない。現代国際法は、領有権の構成要件として歴史的権利、条約承継、征服、占領、長期間の使用等を定めているが、こうした国際法の条件に適う支配の証拠が絶対的なものか、相対的なものかには議論の余地がある。問題の幾つかの島は、実効的に支配されているものもあるが、特に南シナ海の南沙諸島をはじめ殆どの小さな島は誰も住んではいない。ある国は係争中の島を武力で支配したが、かかる行為は国際法に違反する虞があり、従って実効的な支配とは認められない。他方、従来からの領有権が自衛としての武力によって守られる場合もある。最近の南沙諸島を巡る中国、フィリピン及び越の間の対立は、かかる問題の重要性をを想起させる。

南沙諸島に対する中国と越の領有権の主張は歴史的なもので、自然延長論に依っている。これに対しフィリピンやマレイシア等の最近の主張は、歴史的なものというより地理的な近接性に基づくが、地理的近接性は主権の論拠とは言い難い。また海域の権利も領有権の根拠にならないため、フィリピンが群島基線によって南沙諸島を囲い込んでも領有権を確立したことにはならない。同様のことが竹島を巡る日本と韓国の立場にも当てはまる。関連する事実が全て明らかにならない限り、この海域の島を巡る領有権も海域の画定も解決を見ることはない。

(2)海洋法条約の規定

海洋法条約における"島"の定義は、一般国際法である1958年の「領海及び接続水域に関する条約」に基づく。島は領海、EEZ及び大陸棚を保持することになるが、これまでの国際司法裁判所の判例ではその幅は限定的なものであった。

しかし東アジア中部海域では地理的状況が異なり、大陸部から遠く離れた島々の領有権を確立することが、境界画定を有利に運ぶことになるかもしれない。例えば東シナ海の尖閣諸島は地理的には台湾に近い(地図2参照)が、日本の領有権が認められた場合、日本は右を基点に一定の水域を確保することになる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION