重大な質問がここに残る。―アナ シエラ号事件の解決が遅れているのは、不的任な中国当局関係者間の無能ぶりや足の引っ張り合いによるものか、それともサムドラ サムラット号の突然の失踪事件やヒー ミエコ号の乗っ取り事件に見られるように、中国が犯罪事件に関与している事を隠蔽しようとするもっと複雑な計略なのであろうか。この事件は北海やフェンチャンの港が乗っ取られた船舶を保護するのに使われた初めてのケースではないのだ。その地域の係官はもっと前から犯罪活動に関与してきている。中国は海賊行為への一斉取り締まりに一生懸命であると言うにも関わらず、そして効果的な方法があり広報的な面で大きな成果をあげられる機会がありながら、どうして実際にはのらりくらりで、でたらめなのだろう。この事件の解決はまたしても報道の関心を集めるであろう。再度、この業界は中国が国際間の海上事情に関与したいと言うのを本気ではないと決断を下すしかない。
第9章 定義と国際条約
国際法で決められた海賊行為の定義は現実的ではない。国際法では公海以外で起きる襲撃は除外している。2つ目に、国際法によれば、国家が後ろ盾になるものや政治的な理由による事件は海賊的襲撃とはみなされない。目下、ほとんどの襲撃は領海内で起こり、公海上で起きる事件はまれである。これでは関係する国際法によって鎮圧が考慮されなければならない場合に混乱の元になる。
海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)
1958年のジュネーブ海洋法の15条を受けて、1982年に採択されたUNCLOSはその101条に、海賊行為は次に述べる行為からなるものを言うと述べている。
(a) 民間船舶や民間航空機の乗組員あるいは乗客によって個人の目的のために犯される不法な暴行や拘留、あるいは略奪行為がi)かii)の場合;
(i) 公海上で、他の船舶や航空機に対して、あるいは人及び、船舶上や航空機内にある物品に対して犯される行為;
(ii) その国の裁判権外の場所で船舶、航空機、人、物品に対して犯される行為;
(b) 幽霊船や幽霊航空機になることがわかっていながら船舶や航空機を自発的に参加して運行する行為;
(c) (a)や(b)の行為を扇動したり助長したりする行為