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る地域による差がみられる。

 

第3章1節  アジア型海賊行為と呼ばれるものはいつでも存在する。これは船に乗り込まれて、金庫から現金や貴重品が盗まれ、乗組員が受ける暴行の度合いは最低限度である。 この様な犯行は様々な国の領海で起こり、公海上ではない。海賊のターゲット地域としてよく知られているのはインドネシアとシンガポールの間にあるフィリップ海峡であったが、現在は強調されるターゲット地域がインドネシア海域に移っている。こうした犯行はたいてい夜中に航行中の船舶脇に近づき、船舶に乗り込み、現金や簡単に手に入って現金化しやすい貴重品を盗んで行くというものだ。このタイプで特筆すべきは、船舶に乗り込み、しかも抵抗にあわなければ普通は暴行さえ加えないというその業の度合いである。インドネシア海域で起きるものを除けば、不思議な事に、この問題と戦う事を更に困難にするのは、この比較的非暴力的な仕業なのである。

 

1996年にはマラッカ海峡とフィリップ海峡において、このタイプの海賊事件5件が正式に記録された。という事は統計的にみると、この地域を通過中に賊に船に乗り込まれるという可能性は比較的少ないのだ。そして損失が、現金か現金価値のある物に限られるという結果、基本的危険管理が運用される。この管理下では、略奪防止のための費用は被害額を超えてはならないのである。こうした地域では様々なタイプの船舶警護や護衛を請け負う警備保障会社があり、これらは多分手段としては有効なのであろうが、経済的には全く見合わない。

 

1992年にIMBはクアランプールに地域海賊センター(RPC)を設立した。これは24時間体制で船舶に海賊襲撃に関する警告をして援助するセンターである。この地域の国々の中には同時期に海賊一掃に取り組む所もあった。この結果、問題がなんとか手に負える範囲にまでになった。

 

第3章2節  2番目に、南アメリカ型海賊あるいは、かつて西部アフリカ型海賊とか呼ばれていたものがある。これは武装団による停泊中の船舶への犯行で、アジアの海賊よりも暴力的な傾向がある。これらは現金、船荷、個人所有物、船舶の装備品を始めとして、船から動かせるものは全て狙う。こうした犯行の特徴を下記に示す。

 

・厳重に武装した犯人による乗船後の暴力の度合いがひどい。

 

・目的物は現金、現金化しやすい物品、船荷や船舶の装備品など。

 

・1回の犯行による総被害額はアジア型海賊による犯行に比べて大きく、その犯行は計画的である。

 

 

 

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