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3 農のある風景を求めて

持続可能な都市を求めるうえで、都市にある農地の意味は大きい。川崎市の北西部の農業振興地域や市街化区域内の生産緑地など、農のある風景を求めて思索をめぐらせていく。

(1)農のある風景

農業振興地域、田んぼ、森、小川、それに鳥や虫たち、川崎都心部で失われた風景がここにある。懐かしい風景を求めて、おおくの市民がここを訪れる。だが、後継者難など都市農業ゆえの問題が多く隠されている。

川崎市の農地(97年1月1日現在)は約793?であり、うち622?が市街化区域内農地、171?が市街化調整区域内農地となっている。

市街化区域内農地のうち、329?が生産緑地地区に指定されており、残りの293?が宅地化される農地となっている。市街化調整区域内農地のうち、103?が農振地域となっている。

? 市街化区域内の「生産緑地地区に指定された農地」は、固定資産税等が農地課税となり、また、相続税についても納税猶予措置がとられることとなり、農業を続ける農地は残っていくと思われる。ただし、農家世帯の高齢化の現状を考慮すると相続により農地の減少も予想される。

実際に、「主たる従事者」と認められた者の死亡に基づき、買い取りの申し出(生産緑地法第十条)が出されることが多い。法は「特別の事情」がない限り市が買い取りする旨を定めているが、実際に川崎市が買い取ったのは1%に過ぎない。(公園、緑地を初めとする公共施設などの整備状況及び土地利用の状況を勘案し、当該土地が明らかに公共施設などの敷地として不適当と認める場合や著しい不整形地であり当該土地だけでは利用できないもの等は、特別の事情があるものとして買い取りを義務づけることはできない。建設省・「逐条解説生産緑地法」)

? 生産緑地の指定を受けなかった「宅地化する農地」は、ミニ開発により無秩序に宅地化が進められていく可能性が高い。特に、「宅地化する農地」と「生産緑地地区に指定された農地」が混在している場所では、無秩序なミニ開発により営農環境が悪化していく恐れがある。

? 市街化調整区域、とくに農業振興地域は、四つの営農団地を中心に、生産基盤整備・近代化施設の整備などを通じ積極的な生産振興が図られており、また、市民にとって貴重な緑地空間を果たしている。農家にと

 

 

 

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