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が求められている。このことを端的に表現した都市の「環境管理」という語は、都市の「持続的な成長」を可能にする諸施策も包含されている。今後の都市のありようを考える際には、地域住民の利便性の確保だけでなく、「快適な環境」を如何に保ち、持続的な成長を確保していくかという観点からの「環境管理」が必要であろう。

(5)多様な「快適性」

快適な環境の形成がこれからの環境行政において重要性を増すということは先に述べたが、果たしてこの「快適性」とは一体誰にとっての快適さを示すのであろうか。圏域の住民にとっての「快適な空間」は必ずしもその周辺の住民に対して快適さを提供しない場合があり、また、その逆の場合も存在しうる。地域づくりのための諸施策の検討において、環境の観点からの点検が必要であるのはもちろんであるが、個々の開発行為あるいは環境保全行為の実施に際しては、その前段として、「快適な環境」というものが多種多様であること、さらに、今後のまちづくりにおいては、これら多種多様な「快適な環境」の位置づけをより明確にしていくことが求められていくということを理解しておく必要がある。

 

2 行政の果たすべき役割とその在り方

環境問題が、もはや行政のみの取組みで解決可能なものではなくなっていることは既に述べたが、とすれば、環境問題において、行政が果たすべき役割とは一体何であろうか。上記1に挙げた課題を踏まえつつ、以下、今後の環境行政において、大都市における行政の果たすべき役割とその在り方について述べていくこととする。

(1)総合行政主体としての役割とその在り方

平成6年12月25日に閣議決定された地方分権の推進に関する大綱方針において、国は「国が果たすべき役割を重点的に分担する」とともに、地方公共団体は「地域の実情に応じた行政を積極的に展開できるように地域に関する行政を主体的に担い、企画・立案、調整、実施などを一貫して処理していくものとする」とされている。現在においても政令指定都市をはじめとした地方公共団体は広範多岐にわたる事務を処理する総合的な行政主体であるが、今後は、新たな環境という視点からの施策の総合化が求められることとなろう。具体的には、長期計画、都市計画あるいは地域づくり、まちづくり施策等の策定・推進に当たっては、全ての施策等について、環境の観点から点検していかなければならない。その際には、

? 資源消費をトータルで見た場合に必要な政策であるか

? 各主体の役割分担・コスト負担はきちんと切り分けられているか、またそれは如何なる考え方に基づくものか

? 都市の「持続的な成長」の確保に如何に資するか

? 事業者・住民等の各主体の意識の改革あるいは積極的な行動を如何に促進するか

? 「快適な環境」を誰のために提供するのか

? 都道府県その他の行政主体との役割分担の明確化

 

等の観点からの検討を行うべきである。

(2)事業者・消費者としての役割とその在り方

環境基本計画において、国は「国自らがその経済活動に際して環境保全に関する行動を実行することによる環境への負荷の低減効果は大きく」、また「地方公共団体や事業者、国民の自主的積極的な行動を求めるためには、国自らも率先して実行する必要がある」ことから、「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組みの率先実行」を行うこととしている。

これらをうけ、各団体においても、自らの事業者・消費者としての立場からの取組みを率先垂範し、住民、民間事業者のライフスタイルの改善の模範となるべきである。具体的には、適正な廃棄物処理の徹底、公共施設の緑化、ゴミの排出抑制、省資源・省エネルギーの取組みの推進などが挙げられる。その際には上記

(1)に挙げた各項目を検討しておく必要があるのはいうまでもない。

(3)行政体制の整備等

環境に対する取組みは、環境担当部局のみならず、関係行政分野を幅広く含めて総合的な取組みを必要とすることから、地方公共団体内部においては、総合的なビジョン・計画づくり、各種対策の総合的な検討、推進に当たっては、関係部局から構成される連絡・協議を積み重ね、外部に対しても積極的に公表・意見聴取等を行わなければならない。

また、今後、財政上の制約等による周辺の市町村と連携した広域的対応、あるいは自治体レベルにおける国際的な取組みが必要となる場合が増えることが予想されるため、環境行政分野においても、その他の施策と同様、全庁的な体制を整備しておかなければならない。

 

 

 

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