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を充分にシステムとして組み込んでこなかった。しかしながら、環境という観点で都市行政を考える場合には、都市が、エネルギーの大消費地であることから、エネルギー問題を無視することはできないであろう。

都市における物的投入やエネルギー投入は、その利用(消費)段階だけでの効率からのみで判断すべきではなく、投入、輸送、転換、消費、貯蔵、廃棄、再生といった、物とエネルギーのフロー全体(ライフサイクル)の中で効率化することが必要である。割り箸とプラスチック製の箸のいずれがエネルギーの効率的な利用に資するであろうか。エネルギー以外の観点を捨象すれば、答は必ずしも一通りではない。プラスチック箸の製造に要するエネルギー、洗浄に要する水資源とその水の精製に係るエネルギー等は無視できない大きさであるからである。同様のことは電気自動車の利用や、電子機器の利用にも当てはまる可能性もある。

(4)交通対策について

都市における交通問題は、典型的な都市型公害として、従来から都市問題の中でも重要な課題の一つであり、近年その解決の必要性を一層増してきている。大都市においては、これまで、「交通システムマネジメント」として、信号の系統化、渋滞情報や空き駐車場の情報の提供あるいは交差点付近等のレーンマーキングの変更等による多車線化等の既存交通システムの有効利用や駐車場の整備、道路整備等のハード整備などによって問題の解決を図ってきたが、これらの需要追随型のアプローチでは、結局新たな交通需要を呼び込むだけとなることが次第に明らかとなってきたのである。

こうした状況を踏まえ、交通手段の利用を自主的に変更させようとする「交通需要管理(TDM)」が新しい考え方として提案されているところである。具体的には、個人や企業、土地の所有者等に対して、フレックスタイムの奨励による道路利用の時間の変更施策、混雑地域の道路利用に対して課金する経路の変更施策、あるいは勤務日数変更や通信手段利用による勤務の奨励等の混雑発生源の調整などを行わせることによって、交通需要を調整するものである。こういった「アメ」と「ムチ」を併用して、住民のインセンティブを高揚させるという施策は、環境問題のように、住民の意識と実際の行動にギャップの見られる場合には有効であろう。

 

3 快適な環境の形成

(1)自然とふれあえる空間の整備(環境創造)

人口・産業が集中する大都市においては、住民が自然にふれあえる空間を整備して、潤いのある都市生活を確保することは、大都市における環境行政において、最も重要な施策の一つであろう。このため、各都市においては、親水空間、ビオトープ、あるいは人口砂浜等の整備や街路等の緑化を推進しているところである。しかしながら、対象とする利用者の範囲や「快適な環境」に対する価値観の相違等の調整あるいは空間整備に対するコストの問題が、これらの施策の推進の障害になっている事例が見受けられる。

(2)既存の自然環境の保全(環境保全)

 

 

 

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