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(2)大気汚染・廃棄物処理等の問題

二酸化窒素による大気汚染は、近年横這いの状態にあり、特に、大都市地域における道路沿道の環境基準の達成状況は芳しくない。これは、自動車交通量の増大、ディーゼル化の進展等が原因と考えられる。

また、水質に関する環境基準の達成状況を見ると、ここ数年、湖沼については約4割しか達成されていない。また、東京湾の水質汚濁の原因のうち、約7割が生活排水によるものとなっている。

我が国では、毎年、約4億トンの産業廃棄物、約5千トンの一般廃棄物が発生している。大量消費のライフスタイルを反映して、ここ10年で産業廃棄物が約35%、一般廃棄物が約18%増加した。このため、最終処分場の残余年数は、産業廃棄物で2.3年、一般廃棄物で8.2年しかないのが現状である。廃棄物の不法投棄件数は、平成6年で554件に達しており、これは、交通違反を除く行政罰の件数の中でも最大のものである。

これらは「都市型」環境問題と言われるものであるが、詳しくは後述する。

(3)有害な化学物質による環境汚染

現在、世界全体で約10万種類、日本で約5万種類の化学物質が流通しているが、その中で環境中における安全性が確認されているのはわずかにすぎず、多くの化学物質はその環境中における挙動は解明されていない。また、危険性が指摘されている数多くの化学物質が様々な環境中から検出されている。例えば、船舶塗料に含まれ、生態系への影響がある有機スズ化合物が、依然として環境中から検出されている。また、北極のアザラシからもPCBが検出されており、人の母乳からダイオキシンが検出されている。

(4)自然環境の荒廃と生物多様性の喪失

我が国において、これまでに主要河川の河岸の21%、主な湖沼の湖岸の43%、島嶼部を除く本土の海岸の54%が何らかの人工的な改変を受け、現在も増加傾向にある(85〜92年、環境庁調査)。さらに、二次的自然については、管理が行き届かなくために荒廃のおそれが増大している。例えば、私有森林面積のうち、約22%(90年センサス)が不在村地主によって所有されており、森林としての管理が難しい状況になっている。また、農地のうち、耕作放棄地は24万ヘクタールで全体の4.7%にも上り(95年センサス)、全く管理されていない土地が増大している。世界全体では、毎年、日本の国土面積の4割に相当する1,540万ヘクタールの森林が失われている。

また、総理府世論調査によれば、国民の6割強が自然とふれあう機会をもっと増やしたいと望んでおり、近年のアウトドア志向と相まって、人々の自然とのふれあいに対する要望は高まっている。

3 環境問題に対する住民意識の現状

先に述べたように、環境が危機的な状況にあるにもかかわらず、環境問題の構造変化に対する対応は、必ずしも円滑に進んでいないのが現状である。この点につい

 

 

 

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