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基調講演 「地方分権ってなんですか」

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PROFILE

秋田県生まれ。『広告批評』編集長。立教大学社会学部卒業。79年天野祐吉と共に『広告批評』を創刊、88年より編集長となる。著書に、広告に登場した50人の女たちを通して近代女性史を綴った『広告のなかの女たち』糸井重里や川崎徹らに取材した『コピーライターの冒険』のほか、エッセィ集『わがまま主義』(PHP研究所)、『夜中の赤鉛筆』(新書館)、作家橋本治氏との対談集『仲よく貧しく美しく』(ドラマ出版)、『銀座物語』(毎日新聞社)などがある

 

こんにちは、島森です。今、丁寧なご紹介をいただいたんですけど、私、実は盛岡は2度目なんですね。岩手県は、いつも横手に帰ります時に北上を通りますので、気持ちの上では大変近いんですが、割合ご縁がなくて、最近になってこちらにお邪魔する機会が増えたんです。実は私、一昨日まで2週間ほど中国で遊んでおりまして、ダムで沈んでしまうという、あの三峡、それから、いかにも中国らしい風景であるという黄山の岩山など、中国4千年の歴史の深さと広大さに触れて、だいぶボーッとしているんですね。あの広い中国から比べれば、この小さな日本は地方分権といっても、こんな狭い国土の中で、また小さく割って、何を言っているのかと思わなくもないぐらいのところでこのフォーラムを迎えまして、非常にタイミングが悪いなと実は思っているんです。
ただ、今日、東京を出てまいります時に、温度が33度ありました。しかし、こちらはずいぶんさわやかな気候で、あーやっぱり日本も広いんだと思い直しました。気候とか風土とか、もちろん風景がそうですし、おそらくここに住んでいらっしゃる、ここで育まれた皆さんの心情も画一的ではないだろう。もちろん私も秋田に育ちましたので、なんとなく分かる気はするんですけれども。そう考えると、やはりこれだけ、本当に新幹線で3時間ですけれども、来ただけで、こんなに風景や気候や風土が違うとしたら、やはりそれぞれ特有の価値観なり、あるいは特有の生活なり、特有の豊かさ感覚みたいなものもあって当然じゃないかなと思い直しまして、今、気を取り直しているところなんです。今日のタイトルは「地方分権ってなんですか?」って、本当に小学生のようなタイトルですが、実はこれが私の正直なスタンスなんです。
今日、この後のパネルディスカッションに出てくださる先生たちは、こうしたテーマに関していろいろご研究なさったり、発言なさっていらっしゃる方ばっかりだと思うんですけど、私こういうテーマで、こういうところでお話するのは初めてなんです。無理だって最初にお話したんですが、なぜお引き受けするように思い直したかと申しますと、私、地方分権という言葉に関して、学問的にも政治的にもまったくの素人なんですが、この素人が地方分権という言葉を自分のものにしていかなければ、実は地方分権というのは成り立たないのではないだろうか、そんなふうに自分に言い聞かせ、思い直した次第です。これはいつも思うんですけれども、「地方分権」って本当に、私自身も分かっているような気もするけど、よく分からないんですね。漢字というのは大変抽象的な言語で、言ってみれば頭でっかちな言葉だと思うんです。私たちは普段、漢字で物を考えていないと思う、あえて言えばひらがなでしょうか。大和言葉みたいなものでずっと物を考えてきているわけですが、そういう言葉で、ここに「地方分権」という漢字の言葉で書かれているものがかみ砕かれて、自分の身の丈に入ってこなければ、自分のものになっていかないんじゃないかという感じがする。

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