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地方分権と市町村合併

横島 庄治(高崎経済大学教授・NHK解説委員)

 

(1)地方自治法50年の経緯

1947年に地方自治法が施行されて50周年になるが、自治法施行の2年後の1949年、日本の税制調査を目的に来日したC・Sシャウプ氏を団長とする調査団が残した「第1次シャウプ勧告」に地方分権への発想が早くも登場する。そしてその年の内に発足した地方制度調査会の前身の地方行政調査委員会によって検討に移されている。現在に至る地方制度改革のスタートはこの時点まで遡ることになる。しかし分権への取り組みは延び延びにされ、具体的には1993年の「分権の大綱」と衆参両院の「分権に関する決議」をきっかけに活発になったと言うべきであろう。

国側のこうした動きに対応して、自治体サイドも敏速に反応し、93年11月には地方六団体が「地方分権推進委員会」を発足させ、10か月後に「新時代の地方自治」という副題の意見書をまとめている。

この中で機関委任事務の廃止に伴う制度として“限定列挙”の考え方が示された。分権すべき事務の特定に当たって「何を分権するか」ではなく「国に何を残すか」を特定し、残りは全て地方に戻すという発想である。意見書によれば外交・防衛・司法・通貨・貿易。総合開発計画や経済計画の策定・電波管理・気象業務など合わせて16項目に限定して列挙されている。

この発想は国の分権推進委員会では採用されず機関委任事務の廃止に伴う措置としては、自治体が主体的に携わる“自治事務”と国からの委託を受ける“法定受託事務”に分類されることになったが、六団体意見書の思想はかなり強く影響している。

 

(2) 機関委任事務廃止と今後の展開

国の分権推進委員会は4次にわたる勧告の内、国と地方の役割分担については第1次勧告の第1章で国と地方の役割分担について記し、国の役割は ?国際社会における国家としての存立に関わる事務 ?全国的に統一して定めることが望ましい諸活動 ?全国的規模・視点で行なわなければならない施策および事業と明記した。六団体意見書の16項目限定列挙の形を変えた概説化といえる。

これに基づき地方公共団体の執行機関としての知事および市町村長を国の機関とし国の事務を委任して執行させる機関委任事務制度は廃止することを勧告している。最大の特徴である。地方自治法別表に列挙されている、項目数で561(うち都道府県379、市町村182)にも及d都道府県事務の70〜80%、市町村事務の30〜40%を占める機関委任事務こそ、国と地方を「上下・主従」も関係に釘づけしてきた悪しき慣行だっただけに、この廃止勧告は国と地方を「対等・協力」の関係に組み替える決定的システム改革として評価される所以であろう。

ここでは都市計画制度をモデルにこれからの展開を考えてみたい。

建設省の都市計画中央審議会は200を越える関連法が複雑に絡み合う都市計画法をどう運用すべきかについて2年余り審議を続けているが、中間まとめによれば ?個性的なまちづくりの推進 ?広域的・国家的観点からの調整がともに適切に図られることの二つを目的に、都市計画区域の指定、都市計画の決定等地方公共団体の行なう都市計画に関する事務は「自治事務」とする事、特に市町村の役割を一層拡大し、市町村が中心となるべきであるとしている。

そして都道府県の関わりについて

 

 

 

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