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世界的「地方の時代」の到来

―第33回IULA世界会議の概要―

辻 誠二(東京市政調査会常務理事)

 

1. はじめに

私は、今年4月、(財)自治総合センターが組織した「国際地方自治体連合(IULA)世界会議出席とシンガポール行政視察団(団長は柴田護同センター顧問、総勢12名)」に参加し、アフリカのモーリシャスで開催された第33回IULA世界会議に出席し、その帰途シンガポールに立ち寄り、有意義で貴重な体験をすることができました。以下、私なりに理解した今回の会議について、その概要をご紹介させていただきます。

 

2. IULAとモーリシャス

(1)IULA

IULA(The lnternational Union of Local Authorities)は、第1次世界大戦が勃発する1年前の1913年に、ヨーロッパを中心に結成された国際的な地方自治体の連合組織です。現在、世界の約100か国の、400近くの地方自治体連合、地方自治体並びに関係団体(中央政府も含む)、民間団体、個人が会員として加入しています。いくつかある地方自治体の国際的連合組織の中で、最も古くて大きく、先導的な役割を果している団体です。日本では、私が勤務している(財)東京市政調査会を含め、自治総合センター、(財)自治体国際化協会、自治大学校など6団体が会員になっています。

IULAは、重要な活動の一つとして、2年ごとに世界会議を開催していますが、今回、はじめてアフリカ地域で開催されることになり、開催地としてモーリシャスが選ばれたのです。

(2)モーリシャス

今回の世界会議の開催地となったモーリシャスは、日本ではあまり知られていません。南緯20度にあり、マダガスカル島の東800キロのインド洋上に浮かぶ風光明婿な火山島で、全島にさとうきび畑が広がり、周囲を珊瑚礁が囲み、特にヨーロッパ人にとって絶好のリゾート地の一つになっており、「インド洋の真珠」とも呼ばれています。他の多くのアフリカの国と同様に、植民地統治(オランダ領、フランス領、イギリス領と変遷)から、1968年に独立し、更に憲法を改正して1992年共和国(英連邦所属)になりました。

面積は2045k?、人口は112万人(1994年)ですから、沖縄県(面積2265k?、人口122万人)に類似した規模です。歴史的地理的理由から、ョーロッパ、ァフリカ、アジアからの移民が混在し、宗教もヒンズー教、イスラム教、キリスト教、儒教、仏教等種々ですが、多くの民族が、一方でそれぞれの伝統・文化・宗教を守りながら、他方で互いの文化信条を尊重しつつ、兇悪犯罪もほとんどなく、平和的に共存しています。民度も比較的高く(識字率90%以上)、1人当りGNPはアフリカの中では高く、3040米ドル(1994年・第4位)となっています。

後でも述べますが、今回の会議のテ―マは、「地球村における地方分権、多様性とパートナーシップ」でしたが、この会議が、人種差別、貧困、飢餓、内戦、虐殺等多くの問題をかかえているアフリカ地域の中にあって、珍しく、平和で調和のとれた多元社会を実現しているモーリシャスで開催されたことは、特に意義深いものがあったと言えます。

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