日本財団 図書館


た、設置そのものは義務づけられていない場合であっても、それを任意に設置しようとすれば、こと細かく資格や定数などが規定されていたり、さらにはそれが補助要綱によって定められていることもある。

このような必置規制が、自治体の自主組織権を制限し、首長の人事権を制約し、限られた人的資源の効率的利用を妨げていることはいうまでもない。したがって、自治体の事務執行体制を整備し、行政改革による行政運営の弾力化を図るためには、このような必置規制を廃止ないし縮減することが必要である。

このような規制を行っている各省庁の言い分は、全国的に一定水準の行政サービスを確保するためには自治体における執行体制の義務づけが不可欠であるというものであるが、現実の規制の中には、今なお単に大学の一定科目を履修していることを資格基準としているものや、類似した機関でありながら、独立して設置することを義務づけているために、組織の統合による合理化、効率化ができないもの、専任であることが要求されているために、弾力的な人事運営の障害となっているものなど、その規制の理由が明らかでなく、根拠が疑わしいものも多数ある。

このような必置規制に対して、分権推進委員会が考えている必置規制の縮減ないし廃止というのは、それによって達成しようとする行政サービスないし事務そのものを廃止や縮減することでは決してない。それらの行政サービスや、事務の重要性・必要性については問題とはしておらず、その行政サービスを提供し事務を行うための体制についての制約を問題としているのであって、その制約の縮減・廃止を主張しているのである。この点、一般には誤解されている節もあり、検討作業の過程で、必置規制によって一定の職種についている人たちや関連する団体から、その人たちが従事している事務は地域住民にとって不可欠で重要なものであるから、必置規制の縮減・廃止に反対であるという理由で、必置規制の存続を求める強い働きかけがあった。しかし、委員会の意図するところは、自治体の組織を硬直させ、革新を阻害している規制を緩和しようというものであり、個々の自治体が必要と考える機関や職を設置することを妨げるものではないし、それをさらに充実させることについても何ら反対するものではない。個々の自治体が、自ら判断し、創意工夫を凝らすことを妨げている障害を取り除こうとしているにすぎない。

●必置規制見直しの考え方

分権推進委員会では、このような観点から、多数の必置規制について検討し、一定の原則的な考え方に従って、その縮減ないし廃上の勧告を行った。その考え方とは、第一に、自治体の自主組織権が憲法に基づくものであることから、機関や職の設置義務づけの根拠が法律またはそれに基づく政令に拠らないものについては廃止すべきであるというものである。したがって、省令や通達のみに根拠を有する規制は認めず、それらに規制のあり方を定める場合にも、具体的に法令に基づいている場合に限ることとした。

第二に、法令に規定されている規制の場合にも、それを最小必要限のものに限定することとした。たとえば、自治体の組織の中に一定の職を置かなければならないという職の設置規制については、弾力的な組織編成を阻害するものであることから、原則として廃止することとしたが、但し、対外的に公権力を行使するものについては、その一定の役割を表す名称は存置することとし、そのことを明確にするために、法令の規定の仕方をたとえば「〜員を置く」という表現から「〜員に命じる」というように改めることとした。また、定数を規定しているものは極力弾力化し、専任規制は本務に支障のない限り他の職務に従事できるように規定の表現を改めることとした。

行政機関等についても、名称を具体的に規制していると、他の行政機関との統合が困難であることから、たとえば「〜に関する事務所」というごとくに規定することによって弾力的に対応できるようにした。

このような観点から、個々の必置規制を精査してみると、実際には法令の定めるとおりに機関や職が設置されているとはかぎらず、現実の必要に応じて弾力的に設置され、それが黙認されている場合が少なからずあることがわかった。しかし、法令の規定の仕方によって必置を義務づけるものと解釈され、それが地方自治体の自主規制をもたらしていることは否めない。そこで、今回の勧告では、弾力的な運用が許容される場合には、それが明確にわかるように法令の規定の仕方を改めるようにした。それによって、今後は、自治体にとっては、何が真に必置規制であ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION