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序文

1896年(明治29年)11月29日、同志12名が東京築地水交社にて会合し造船協会の設立を協議決定した。翌1897年(明治30年)4月1日に「造船協会趣意書」を発表し、正式に造船協会(日本造船学会の前身)が創立された。それ以来日本造船学会はわが国の造船造機技術発展の舞台となり、時には先導となり、時には下支えとなり、多くの貢献をはたして来た。

その間1945年(昭和20年)の第二次世界大戦終戦までの48年は戦争の時代であり、戦後の52年間は復興と平和国家建設への道程であり、今や日本は米国に次ぐ世界第二の経済大国となった。その発展の牽引車となった産業の一つが造船工業である。

日本の造船技術は100年前は英国をはじめとするヨーロッパ諸国の造船技術者や造船学者の指導を受けてその礎をきずいた。また第二次世界大戦後の復興の時には、米国の新しい建造技術の教えを受けた。日本は1956年以来41年間にわたり船舶建造量世界一の座を維持している。この輝かしい実績は、造船界に身を置く先人達のたゆまぬ努力と研鑚による造船技術の向上によることは勿論であるが、これらの諸外国の力添えも忘れてはならない。今後はアジア諸国をはじめとする世界の造船国と手をたずさえて、新しい発展を期したい。そのために日本造船学会が果たす役割は極めて大きい。

本年(1997年)日本造船学会の創立百周年記念事業を行うにあたり、記念事業の一つとして本書「日本造船技術百年史」の刊行を企画した。過去にも、造船協会が編集した「日本近世造船史」、「日本近世造船史・大正時代」および「造船協会四十年史」そして、70周年を期して刊行した「昭和造船史」がある。これらも、日本の造船の技術史を後世に伝える貴重な文献であるが、本書も日本造船学会の百年間の活動を軸として日本造船技術百年の発達の足跡をふりかえり、それを記録に残し後世に伝える役割を担うものである。

本書は、1895年から1995年迄の100年間を5つの時代に区分して第?部から第?部とし、各部において、性能、強度、建造、設計、機関、海洋技術の分野別に章立てした構成にしている。各章は、その分野の第一人者の方に執筆を依頼し、専門に偏らず読んで面白い書物にするとの意向で執筆者はじめ関係者一同努力を傾注した。

各社自慢の船舶等の写真を集めた写真集は、本書に華やかな彩りを添えるものと思う。

10年後、20年後にも本書が造船技術史の良き図書として広く多くの人々に読み継がれていく事を期待するとともに、本書によって先人の努力を知り、今後の日本造船界の発展の指針を与えるものとなれば幸いである。

 

1997年5月13日

日本造船学会会長

大庭 浩

 

 

 

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