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は最初そんなに重要性がなくてもスタートして,それが今になったっアメリカの予算書に,船が木船から鉄船になったなんていうのは大したことじゃないんだと。必要性があってなったので,本当に重要なのは,まずコンテナ化する必要性を強く社会に訴えて成功させたアメリカの考え方なのだということを言っております。事ほどさように社会の変革を予測するということの方が船の将来を予測するよりは重要だと申し上げたいと思います。

○小 山  今の田中さんの話はやはり鶏と卵の議論のような感じがしまして,社会的にそういうポテンシャルがあるところにある提案があったときにばっと受け入れられるのか,あるいは出た結果が社会を変えたのか,見方によってどっちでもとれるのではないかと私は思います。現実に私どもは小・中学校のころ,製鉄所は石炭か鉄鉱石の産地に立地するというふうに教えられていたわけですが,現実に船が大きくなって専用化し,臨海工業地帯が一番安い原料を使えるようになったのは厳然たる事実でありまして,それはどちらの見方もできるのではないかと思いますが,鉄鋼業の場合だとむしろ私は船が社会を変えたというふうに見るべきではないかと思います。余りどっちが正しいかという議論をしてもしようがないような感じがします。

○山 本(運輸省) 私も小山先生と全く同感でございまして,レジュメでは具体例を入れませんでしたが,技術が社会を変えるという具体例の有力な一つが,実は鉄鋼業と船舶の関係でございました。技術を持って,技術に志し,技術で何かをしようと致しますと,どうしても技術が社会に大きなインパクトを与えることになります。技術が社会を変えるというふうな気概は,これまでも現に幾つか実例があったと私は思います。これからもそういった心構えで技術開発に取り組むというのが非常に重要であり,そういう姿勢を示すことが,先ほどらい議論がありました技術に全般的に若い人の関心を呼び起こすことの一つの重要な要素になると思っております。

観点を変えてもう一つ。船舶の例では小山先生の例のほか,タンカーが大型化していった裏には,単に原油をとってガソリンにしたり灯油にしたりするというのではなく,それの生産コストをどうやって下げるかというところで行き着いたのが消費地精製主義でありまして,それを支えたのがまさに溶接技術とブロック建造を主体としたタンカーの大型化ということで,これも技術が社会を変えた大きな力の一例だと思います。

船以外の側を申し上げますが,一番強烈なのはモータリゼーションでございます。人類の永遠の夢である自分の自由な意思によってより速くどこにでも行きたいということ。これをかなえるのは自動車以外にないのですが,これには相当のコストがかかります。個人的に買うにも相当のお金が現在でもかかっているのですが,それがこれだけ普及した。車を受け入れるために,相当の犠牲を払いつつも社会全体を変えていって現在の文明があるというのは最大の例だと思います。最後の例ですが,プロペラ機ではなし得なかったことをジェット機が実現した。ジェット化して,単に速くなったのみでなく,高いところを飛ぶということで,飛行機に乗る一般大衆の恐怖心をなくし,不快さをなくし,どこにでも行けるというような状況をつくって,現代が発展している。こういうようなことも言えるかと思います。

こういう技術を開発した人は,当初には思いもよらなかった波及効果だったかもしれませんが,我々は技術開発に取りかかる際にはそういったことを思い浮かべながらプロジェクトを組んでがんばっていきたい。現に,たまたま運輸省がかなりコミットして取り組んできました,テクノスーパーライナーやメガフロートにいたしましても,まさにそういった姿を思い描きながら,皆さんと一心同体になってこれを進めようと燃えてやっているわけでございます。

私は,昨年たまたま大学で講師として大坪先生のところで学生の皆さんにお話をさせていただく機会を得ました。そのとき,こういう二つの事例を御紹介申し上げましたが,これ自体が大変若い皆様の関心を引きつけ,物すごい手ごたえを感じることができました。こういった意味で私ども技術に携わる人間に共通のものというのは年代にかかわりなくあるし,伝えられるなと思っております。

そういったわけで,敢えてキザッぽい表現ではございますが,技術が社会を変えるというのを技術に携わる人間の一つのキャッチフレーズにしたいと思っております。

○小寺山(九大) 討論の最初に,前提としてパイは一定と言われましたが,今までのイメージと違った船,あるいは海洋構造物が提案できれば,需要は飛躍的に伸びるということはあり得るわけです。今まで飛行機に乗って旅行していた人が船に帰ってくる。高揚型のTSLができれば造船業全体としてパイは増えるということだし,海洋について言えば非常に大きなパ

 

 

 

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