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その他、ISMコード(International Safety Management Code)に基づき船社に対して発給される適合証書(Document of Compliance)、及び船舶に対して発給される安全管理証書(Safety Management Certificate)の発給はCRに委任している。

 

5-2. 東南アジア諸国

本章冒頭で述べた通り、東南アジア諸国は所謂伝統的な海運造船国ではなく、便宜置籍国でもない。従って、政府は大きな船舶検査部門を有することなく、専らIACSメンバーのような、船舶関係技術及び諸規則に専門知識を有する機関を活用して、IMOの諸規則を実施していることが予想されたが、想像以上にそれぞれ国際条約の履行、国内規則の充実に取り組んでいる。

 

インドネシアは、今回調べた東南アジア諸国の中では特異な制度を有した国である。独自の船級協会(BKI-Biro Klasifikasi Indonesia)を有し、そこへの入級を強制し、その船級協会のみを公認している。入級が強制されるのは、全長20m以上又は100GT以上又は主機関出力100PS以上の船舶であり、BKIは船体、機関の検査を任されている。

船舶検査関係法令として、「1994年第21号海事法」(Law of Maritime)が制定されたが、その施行のための大統領令及び大臣令が未だ発効してなく、オランダ統治時代の1935年に制定された「船舶に関する規則'35」がまだ適用される由であった。国際航海船舶に対しては74年SOLAS、73/78 MARPOL、66LLC、69TMS等をそのまま適用している。

同法令の立案及び実施組織は運輸省海運総局(Directrate General SEACOM, Department Transportation)で、ハーバーマスターがマリンインスペクター(MI)を置いている。

マリンインスペクターの数は約220名と我が国並で、別に積量測度官も有する。検査官は、全ての船舶の検査を出来るクラスAと、500GT未満の船舶の検査が出来るクラスBに分けられ、'97年時点でクラスAの検査官が160人、クラスBの検査官が59人となっている。ハーバーマスターコース、マリンインスペクターコースに分けて3ヵ月毎に研修を受ける。

大きな港(クラス)4港にはAクラスの検査官が配置され、27州の他の港にはAクラスとBクラス、又はBクラスのみいる。検査官のクラスのみでなく、この港湾管理事務所のランクに応じて検査、発給出来る証書に制限を設けている。

船体と機関の検査については、大臣布告に基づきインドネシア船級協会“BKI”(Biro Klasifikasi lndonesia)に委ね、その他はケースバイケースである。IACSによる検査は、LLC関係も含めて、その時点に応じて判断される。海外にいる船舶がIACSの検査を受けていれば、SEACOMがその内容を検討し、その許可のもと、証書の発給を受けられる。

500GT以下の船舶の検査はBKIに委ねられ、BKIがIACSを活用している。IACSのメンバーとしては6協会(ABS、BV、DNV、GL、LR、NK)にKRとCCSを加えたものが活用される。政府と船級協会以外の検査機関はない。

無線設備の検査はSEACOMの無線検査官により行われる。以前はハーバーマスターが行っていたが、新しい規則ではSEACOMが行う。ただし、これもケースバイケースで、メーカーがその製品について実施した試験については、その内容を検討して証書が発給される。

 

 

 

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