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まえがき

 

膨脹式救命いかだは、国内で実用化されて以来約40年の歴史を有し、この間、その品質、性能において多くの改善がはかられ、救助率の高い極めて有効な救命設備として認められ、海上で遭難した乗員の人命救助に多大の貢献をしてきた。

しかし、救命いかだが海上で上下反転状態で膨脹した場合、乗組員は海水中に入り、これを乗込み可能な状態に復正させる必要がある。しかし、救命いかだが大型で海水温度が低い場合等の悪条件下では、いかだの復正に時間を要し、場合によっては復正できず非常事態に陥ることも考えられる。

エストニア号の事故を契機として、RORO旅客船の基準見直しがIMO(国際海事機関)において検討され、1998年7月1日以降に建造されるRORO旅客船に搭載される救命いかだはすべてリバーシブル(両面に天幕を持つ構造)型か、又は自己復正型であることと決められた。また,それら新型式救命いかだの要件及び試験基準はLSAコード(Life-Saving Appli-ances Code)及びA.689(救命設備の試験基準勧告)改正案として規定された。

これらの機能をもつ救命いかだは、国内においては皆無であり、IMOの動向等を考慮すると、早急に開発し、実用に供する必要がある。

 

前年度は、リバーシブル型及び自己復正型のそれぞれの型式につき性能・試験基準案を整理・検討の後、異なる構造をもつ各種タイプの新型式救命いかだの試設計を行い、その中より性能、信頼性、経済性の面から総合的に優れていると思われる自己復正型タイプのものを選定し、一次試作品を製作し、自己復正等の各種性能試験を実施し、性能評価と改良点の検討を行った。

本年度は、前年度の調査結果に自動排水機構を取入れ、さらに、いかだ本体及びンテナ強度の補強等の改良を加えた二次試作品を設計製作した。

この試作品に対して、自己復正、自動排水、水中膨脹、風速等の諸試験を実施し、復元力計算との比較検討、試験基準による評価を行った結果、本タイプは、基本的に、実用化可能であるとの結論を得た。

 

 

 

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