日本財団 図書館


〔参考〕

気室布の性能劣化

 

ゴム引布が膨脹式救命いかだの材料として最適であることは使用実績から世界各国が認めている。わが国では戦前は綿布又は絹布を基布として天然ゴムを被覆したゴム引布を素材としていたが、戦後合成繊維及び合成ゴムの開発が著しく、目的に応じ適材が適所に用いられるようになり、いかだにはナイロン、ビニロン、ポリプロピレン等の合成繊維とクロロプレン系合成ゴムのネオプレンが各国で汎く用いられている。

合成繊維は軽くて強いが、そのままでは日光、熱及び摩擦の影響を受け易いので、合成ゴムを被覆して防護している。ネオプレンは天然ゴムに比し、耐寒性と伸縮性に劣るほかはすべての点で良好な性質を持っている。

(1) ゴム配合物

合成ゴムにはクロロプレン系のほかブタヂエン系、シリコン系その他種々あり、特性に応じて使い分けられる。その一つのネオプレンは平均的に性能がよく最も汎く用いられている。

クロロプレン系ゴムは液状モノマーが重合して固体のポリマーの形をなしており、これを原料生ゴムと呼んでいる。これに機械的性質、耐老化性、加工性等を与えるため老化防止剤、充填剤、加硫剤を使用目的に応じ適宜配合添加したものを配合ゴムというが、配合比は各メーカーの経験と技術により異なる。

配合ゴムは型に入れ、あるいは布に被覆して加熱加硫し、ゴムモールドあるいはゴム引布としたり、溶剤に溶かして接着剤とする。使用にあたり加硫促進剤を加え、常温で20時間以上たつとある程度加硫が進行するようにしたものを通称ゴム接着剤という。

(2) ゴムの性質

082-1.gif

(3) ゴムの老化

加硫ゴム中ではすべてのCが二重結合を開いて配合剤の結合をするとは限らず、C=Cのまま残るものもある。C=Cが全くなくなった状態は硬質樹脂に似て可撓性を失い、いかだには使用できない。

加硫ゴム製品は生産直後から直ちに空中の酸素、オゾン、日光、油、錆等を始め機械的な力の猛烈な攻撃に遭い、Cの二重結合が切られて酸素やオゾンが結び付き、鉄錆と同様に酸化物となるが、この攻撃に耐える力のあるのが適正加硫品である。酸素は空気中の23%を占め、それより遥か強烈な攻撃力を有するオゾンは陸上より海上に、また上空の方に多い。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION