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善した。ドイモイの実施以降も灌漑施設の整備が進められ、主として乾期作付面積の増加により、灌漑面積(作付)は1985年の125万ヘクタールから1994年の198万ヘクタールヘと、10年間で73万ヘクタールもの増加をみている(表5参照)。

メコン・デルタでは、デルタ全体の用排水を一元的に管理するような水管理システムはいまだ存在しない。また、大部分が海抜2.5m以下であるので、雨期にはデルタの25%が河川洪水水位より下になり、乾期には海抜の低い地域で水位がマイナス標高となるなど、水位の変動が大きい。このため戦争終結後の水利事業では、雨期の洪水の排水と乾期の干満を利用した沿岸部淡水の上流部への送水とを、いかにするかに主眼が置かれてきたという。また近年における短かん品種の導入により、雨期の排水問題の解決がよりー層重要な課題となっている。

このように、メコン・デルタでは灌漑排水のための水路網・揚水施設はすでにかなりの程度建設されているものの、一元的水管理システムがいまだ形成されておらず、雨期の洪水対策、乾期の干ばつに対する有効な対策は講じられていないし、既存の水路網も維持・改修作業が必要である。このためには、多額の資金が必要であるが、政府の灌漑関係予算には限りがあり、海外からの援助に多くを依存せざるを得ず、簡単には実現しそうにない。残されている未開地も、硫酸塩土壌地帯の20万ヘクタールであり、開発は容易ではない。

タイ、ベトナムにおいては稲作用灌漑インフラの増加に対する制約が大きいのに対して、ミャンマーでは、利用可能な水資源の5%しか利用されておらず、100万ヘクタールもの稲作用未開墾地が残されているなど、未利用の水、土地資源が多く残されている、といわれている。注10)

しかしながら、従来、灌漑水の利用による農業発展という方向は、ミャンマー農業の発展戦略の中で、重要な地位を占めていなかった。その結果、ミャンマーにおける灌漑面積および灌漑面積率は元来非常に低い水準にあった。灌漑面積は1960年代に増加したものの、その後1991/92年度にいたるまで、灌漑面積も灌漑面積率もほぼ横ばいであった。しかし、91/2年度から95/6年度までの間に政府は十分な水供給を確保するために、1)ダム、堰、溜め池の建設、2)既存のダム、溜め池の改修、3)洪水や満潮時に河川、クリーク、小川などを堰き止め、水を貯水するための水門の

 

 

 

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